骨盤部陳旧性神経鞘腫 ancient schwannoma in the pelvic cavity |
画像所見 |
腹部CT(遅延相:連続画像) |
左卵巣静脈は退縮した左卵巣と連続 |
腹部CT(遅延相) |
腫瘤の発生部位は卵巣以外 |
MRI |
腫瘤内には液面形成を認める。充実成分は拡散制限を示す |
線維性被膜あり |
MRI T2WI 矢状断像、冠状断像、横断像 |
画像所見のまとめ
●骨盤内多房性嚢胞性腫瘤
・大きさ:106×83×91mm
・嚢胞内容物:T2WI高信号、T1WI低信号、液面形成あり
・充実成分あり:一部に拡散制限あり
・嚢胞壁:T2WI/T1WI低信号の厚い被膜あり
・周囲のリンパ節腫大なし 腹水なし
●その他
・右卵巣嚢腫(+)、左卵巣は正常。
・子宮は圧排が主体
摘出標本 術中所見では仙骨前面やや左側に強固に癒着 肉眼的に腫瘤内部には出血があり、嚢胞壁は白色〜黄色充実 |
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病理組織 |
陳旧性神経鞘腫 Ancient Schwannoma |
【概説】
●神経鞘腫のvariant(Degenerated neurilemmoma).
●出血・変性・嚢胞状壊死に富む.
●これらの変性は腫瘍の長期間にわたる進展の結果.
●発症から手術まで平均8.3年(1〜20年)
●高齢者に好発.性差はない.
●好発部位:
・頭頸部、四肢に好発。
・後腹膜発生は比較的稀(仙骨近傍あるいは骨盤外側が多い)。(Isobe K, et al. AJR 2004)
【臨床症状】
●圧痛またはしびれが最多(86%)
●後腹膜原発の多くは無症状。診断時には腫瘍径の大きな例が多い。
【病理所見】
●変性および疎な細胞成分(Antoni type B)がびまん性分布を示すのが特徴。肉眼的には黄色調。
粘性の高い領域、出血、嚢胞状壊死などが混在し、赤〜茶色を示す。
●他の軟部腫瘍(肉腫)との鑑別が困難とされる。
●免疫染色:S-100、vimentin、Leu-7が陽性を示す。(Isobe K, et al. AJR 2004)
【画像診断】
●CT/MRI:
・境界明瞭な腫瘤。線維性被膜により被包化。
・嚢胞周辺部(100%)および被膜(71%)に増強。
・石灰化(29%)
●核医学:
・骨シンチで中等度〜高度の集積(100%)
・Gaシンチで集積なし(0%)(Isobe K, et al. AJR 2004)
画像所見の特徴 |
MRI: CT: |
冠状断像では、腰椎レベルで左神経根との連続を認める。 (Takeuchi M, et al. Abdom Imaging 2008) |
骨盤内陳旧性神経鞘腫の鑑別疾患 |
・Serous/mucinous cystadenocarcinoma (ovary/retroperitoneum)
・Abscess
・Necrotic soft tissue sarcoma (GIST, Melanoma, Ganglioneuroma, Neuroblastoma, Hemangiopericytoma, Liposarcoma)
・Necrotic metastatic lymphadenopathy
結語 |
・高齢者女性骨盤部に発生した陳旧性神経鞘腫の1例を提示した。
・疾患の絞り込みにおいては、正常卵巣を検出することによる卵巣外病変であることの判定、および腫瘍と仙骨神経との関連性の同定が重要である。
参考文献
・Isobe K, et al. AJR 2004; 183:331-336.
・Takeuchi M, et al. Abdom Imaging 2008; 33:247-252.
・Shanbhogue AK, et al. Radiographics2012; 32: 795-817.
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