肝未分化癌 undifferentiated carcinoma of the liver |
画像所見 |
初診時CT: 単純/動脈優位相/門脈優位相/平衡相 |
腫瘤の内部を右肝静脈と門脈右後区域枝が貫通している。 |
CTAP 冠状断 腹側 → → → 背側 |
P6、P7の分枝は腫瘤の内部を貫通している。 |
CHA造影 |
腫瘍の栄養血管はA6+7。 辺縁優位に淡い腫瘍濃染が認められる。 |
T1WI /T2WI/DWI/ADCmap |
T1WIで低信号、T2WIでは軽度高信号、中心部は高信号を示す。DWIでは辺縁の充実成分と思われる領域が高信号を示し、ADC値は低下している。T2WIでは腫瘤の内部を貫通する右肝静脈のflow voidが確認できる。 T1WI f/s 動脈優位相 門脈優位相 遅延相充実成分が経時的に軽度の造影増強効果を受ける。 |
画像所見のまとめ
【初診時CT、angio-CT】
・肝右葉後区域の分葉状で被膜形成のない、境界不明瞭な充実性低吸収腫瘤。
・CTでは辺縁部が動脈優位相から門脈優位相、平衡相にかけて経時的に軽度enhanceされる。中心部には造影効果を受けない低吸収域を認め、壊死と考える。
・CTAPでは腫瘤全体がdefectとなり、CTA第1相から第2相にかけて充実成分がenhanceされる。
・腫瘤の内部をP6,P7、右肝静脈が貫通している。
・腫瘤より末梢のB6,7の拡張は認めない。
【MRI、PET】
・肝右葉の分葉状の腫瘤。T1WIでは低信号を示し、T2WIでは肝実質より軽度高信号、中心部は高信号を示す。
・DWIでは辺縁の充実成分は高信号を示し、ADC値は低下している。
・EOB造影MRIでは充実成分が経時的に軽度の造影増強効果を受ける。中心部は造影増強効果を受けない。
・肝細胞相ではEOBの取り込みは認めない。
・FDG-PETでは腫瘤の充実成分に高度の集積を認める。
術前診断:胆管細胞癌
手術適応:単発にて、他に転移を認めない。
術 式:肝右葉切除術+胆嚢摘出術
手術所見:逆J字で切開した。播種(-) 癒着(-)
全体的に組織は脆弱であり、容易に出血した
ので剥離操作に留意する必要があった。
腫瘤の最大径は90x95mmであった。
摘出標本:マクロ割面像 |
弱拡大 細胞には核分裂像が目立ち、部分的に壊死を伴う。 微小乳頭状様構造や神経原性腫瘤の組織構造の一つであるロゼット様の配列(○)を認める。 腺管構造は全く認めない。 神経内分泌細胞のマーカー(CD56, Synatopsin,ChronograninA,NSE)はいずれも陰性。 総合的にP53は陰性であるが、核分裂像を反映するPHH3は部分的に陽性である。 |
免疫(AE)染色 |
免疫(Ki−67)染色 |
病理診断:肝未分化癌
Undifferentiated carcinoma are tumors that are primary to the liver and can be diagnosed on immuno-histochemistry, but cannot be further classified.
肝未分化癌 |
・肝原発の上皮性腫瘍のうち2%以下とされ、非常にまれ。病因は不明。
・臨床症状はHCCに類似する。
・通常はhypovascularな腫瘍であり、急速に増大する。
・AFPやPIVKA2、NSEが高値を示した報告もあるが、非特異的。
・被膜形成に乏しく、壊死や出血を伴う。
・腫瘍細胞は紡錘形あるいは多形性。胞体に乏しく、短紡錘形から類円形の核を有し、髄様に増殖する。
・細胞の接着性は喪失し、束状を示す。破骨細胞様巨細胞が散在している。
・神経内分泌系の細胞を含んでいた報告もあり、その場合はNSE高値を示した。
・組織像のみでは肝細胞癌との診断は困難な癌である。
・画像診断のまとまった報告は検索しえた範囲にはなかった。
参考文献
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