骨盤放線菌症 pelvic actinomycosis |
放線菌症 (Actinomycosis) |
・嫌気性グラム陽性桿菌で、主にActinomyces israelii による慢性肉芽腫性疾患。口腔内,消化管内、生殖器の常在菌。
・頭頸部で好発(40-50%)、次いで胸部(15-20%)、腹部骨盤部(20-30%)で生じる。
・直接浸潤が主体、タンパク分解酵素による正常組織破壊を来し、しばしば腹膜や筋膜を越えて進展する。まれに血行性転移。
<診断>
・一般細菌検査での診断は困難で、確定診断には病理組織学的な菌塊の証明が必要である。
・子宮内膜・膣細胞診で診断されることがある。
・CT、MRI やFDG-PET/CT では悪性腫瘍との鑑別がしばしば困難である。
<治療>
・(大量)penicillin 投与、病巣が広範な場合には膿瘍除去術など。 → 予後良好。
腹部骨盤放線菌症(Abdominopelvic Actinomycosis) |
<画像所見>
・不均一な造影効果を示す腫瘤形成、強い浸潤性を示し周囲の正常臓器、筋膜、腹膜への直接浸潤が主体。
・いずれも非異的でしばしば悪性病変との鑑別に苦慮
→PID の原因となる病変は全て鑑別:悪性腫瘍(子宮,卵巣,卵管由来)、子宮内膜炎、憩室膿瘍、クローン病....
*強い浸潤性の進展を呈するが,腹水やリンパ節腫大が目立たない。
腸管や腸間膜に比較的広範な病巣が及んでいてもイレウスを来しにくい。
<IUD との関連性>
・骨盤放線菌症患者の90%以上にIUD 長期使用歴がある。
・長期使用者(4年以上)で特に感染率が高く、IUD 使用者の1.65%-11.6%に感染が見られる。
◆骨盤内、腹腔内に浸潤性腫瘤や強い炎症性病変を示唆する所見が見られた場合に、
特に女性でIUD の長期使用者においては、骨盤内放線菌症も鑑別とすべき。
◆悪性疾患との鑑別はしばしば困難ではあるが、
腹膜や筋膜をこえるような強い浸潤傾向を示す一方で腹水貯留やリンパ節腫大が目立たない、
イレウスを来していないなどの特徴に留意すべき。
◆本疾患は、早期診断されれば抗生剤投与により治癒する予後良好な疾患であり、
不必要な手術を防ぎ、炎症進行を防ぐ為に、放線菌を想定した早期の組織診および治療が望まれる。
参考文献
・Arife Simsek et al.Pelvic actinomycosis presenting as a malignant pelvic mass: a case report. Journal of Medical Case Reports 2011, 5:40
・Hawnaur et al.magnetic resonance imaging of actinomycosis presenting as pelvic malignancy.The british Journal of Radiology,1999,72;1006-1011
・Charikleia Triantopoulou et al.Abdominopelvic actinomycosis: spectrum of imaging findings and common mimickers.Acta Radiologica Short Reports 3(2) 1-5.December
2013.
・Hyun Kwon Ha et al.Abdominal actinomycosis:CT findings in 10 patients.AJR 1913;161:791-794H
・kevin F. O'Connor et al.Pelvic Actinomycosis Assosiated with Intrauterine Devices.Radiology 1989;170:559-560
・南條ら,産婦人科の進歩,2013
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