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第 357 回 東京レントゲンカンファレンス[2015年1月22日]
症例4 30歳代 男性 : 左耳の自声強聴(以前より大きな音を聞くとめまいがあった)
上半規管裂隙症候群
superior canal dehiscence syndrome


 Tullio 現象

・大きな音を聴いたときにめまいが生ずる現象。
・迷路瘻孔の存在を示唆している。
・外リンパ瘻、メニエール病、内耳奇形、内耳炎、真珠腫、頭部外傷、アブミ骨手術後、アブミ骨のhypermobility、superior canal dehiscence syndrome(SCDS)。


 上半規管裂隙症候群(Superior Canal dehiscence syndrome)

【概念】
・1998 年、Minor らによって初めて報告された比較的新しい疾患概念。
・上半規管上を被っている中頭蓋窩天蓋や上錐体洞近傍の上半規管周囲に骨欠損を生じ、瘻孔症状、Tullio 現象、難聴など様々な臨床症状を来す疾患単位。
・欧米に比較してアジア諸国では少ない。

【検査と治療】
・前庭誘発筋電位(Vestibular evoked myogenic potential)検査において、振幅の増大と反応閾値の低下が見られる。
・治療は、手術的治療として、上半規管内腔の閉鎖手術、筋膜や骨片による裂隙部の閉鎖手術。保存的治療としては、耳栓装用による強大音曝露予防や鼓膜換気チューブ挿入。

【原因】
・骨欠損は先天的なものではないかと推測されているが、患者は成年に達してから発症している。
・頭蓋底骨の先天的発育不全による上半規管上部の骨欠損に、何らかの二次的障害が加わり発症するのかもしれない。

【CT 所見】
・CT では上半規管の頂部に骨欠損がみられる。
・コリメーションが1mm のCT では偽陽性が見られる事があり、コリメーションを0.5mm とし、上半規管と平行な面で再構成することで、特異度や陽性適中率が改善する。
・Re らのprospective study では、側頭骨CT を受けた191 人の患者のうち17 人にSSCD を疑う所見があり、うち5 人は両側性であった。この計17 人のうち、実際にSSCD の臨床所見や検査所見を呈したのはわずかに2 例であった。


 結語

・めまいや難聴を生ずる疾患の一つとして、上半規管裂隙症候群がある。
・めまい、難聴を伴う症例の側頭骨CT にて上半規管の骨壁欠損を見た場合には、上半規管裂隙症候群の可能性も指摘し、精査をすすめててもらう。
・しかし、冠状断CT で上半規管に裂隙が疑われても、臨床所見が伴わない症例においては、実際には裂隙が存在しない可能性があり、CT 所見のみで、安易に上半規管裂隙症候群と診断すべきではない。

 

 


参考文献

  • 鈴木光也 日耳鼻 114:15-23 2011
  • 室伏利久 Equiilibrium Res 60:194 2001
  • Belden CJ et al Radiology 226:337-343 2003
  • 正木 義男 耳鼻臨床 101:11;835-839,2008
  • Re M et al. Ann Otol Rhinnol Laryngol. Vol. 122 625-631 2013

 


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