Cowden 病 Cowden disease |
本症例の画像所見 |
・左小脳半球腫瘤
T2WIでいわゆるTiger-stripe pattern. (低信号と高信号の縞模様)
腫瘤の造影効果はない。腫瘤内(肥大した小葉間)に拡張した静脈が走行。
⇒ Lhermitte-Duclos Disease
・胃全体に無数のポリープ様隆起性病変
⇒ のちに内視鏡で食道ポリポーシス、胃ポリーポーシスが確認された。
・歯肉腫脹。舌に乳頭状多発隆起あり。高口蓋。
・甲状腺結節。
・頚部、両側副腎領域に多発脂肪腫。
・右頚部に動静脈奇形。
以上の所見の組み合わせから、Cowden Disease(Cowden Syndrome)と診断可能である。
診断:Cowden Disease(Cowden Syndrome, 以下CS) |
・全身に過誤腫が多発する症候群。悪性腫瘍の発生リスクも上昇する。
・常染色体優性遺伝(ただし、多くは孤発性)。
・癌抑制遺伝子であるPTEN遺伝子の異常(CS患者の85%程度)。
注)PTEN:Phosphatase and Tensin Homolog Deleted from Chromosome 10
注)PTEN遺伝子異常により過誤腫が多発する症候群はほかにもある。
PTEN hamartoma tumor syndrome
-Cowden syndrome
-Bannayan-Riley-Ruvalcaba syndrome
-PTEN-related Proteus syndrome
-Proteus-like syndrome
CSの診断基準(青字は本症例で認めたもの) |
特徴的基準 | 大基準 | 小基準 |
成人Lhermitte-Duclos病 皮膚粘膜病変 -外毛根鞘腫(顔面) -四肢角化症 -乳頭腫病変 -粘膜病変 |
乳癌 甲状腺癌(特に濾胞癌) 子宮内膜癌 大頭症 |
その他の甲状腺病変 精神発達遅滞(IQ≦75) 過誤腫性消化管polyps 乳房線維嚢胞性疾患 脂肪腫 線維腫 泌尿生殖器系腫瘍 泌尿生殖器系奇形 子宮筋腫 |
家系にCS患者がいない場合 | 家系にCS患者がいる場合 |
-特徴的な皮膚粘膜病変 -大基準2つ以上 -大基準1つ+小基準3つ以上 -小基準4つ以上 |
-特徴的基準 -大基準1つ以上 -小基準2つ以上 -Bannayan-Riley-Ruvalcaba Syndromeの既往 |
・悪性腫瘍の生涯発生リスクは
乳癌(女性の25-50%)、甲状腺癌(10%)、子宮内膜癌(女性の10%)。
皮膚癌、腎細胞癌、脳腫瘍のリスクもCS患者で上昇。
・血管奇形もPTEN hamartoma tumor syndromeでしばしば見られる。
Lhermitte-Duclos Disease(以下LDD) |
・Dysplastic Cerebellar Gangliocytoma。Dysplastic ganglion cellからなる小脳良性腫瘤。
・WHO gradeT(HamartomaなのかNeoplasmなのかは議論あり)。
・LDDの40%がCS。CS患者の15%にLDDあり。
・無症状 or 脳圧亢進症状 → 症状があればVP shunt, surgical debulking。
・何年もかけて緩徐増大。
<画像所見>
・T2WIで“Tiger-Stripe pattern”。 ・・・診断的所見!
・腫瘤の造影効果はほぼない。肥大した小葉間に拡張した静脈が走行。
・DWI高信号(細胞密度の高さを反映)。
・rCBV増加(拡張した静脈を反映)
・石灰化は稀。出血・壊死はない。
皮膚粘膜病変 |
・CS患者の99%が30歳までに皮膚粘膜病変を呈する。
過誤腫性消化管polyps |
・日本人CS患者の95%に消化管polyposisあり。
・食道polyposis(Glycogenic Acanthosis)はCSに特徴的(CSの85.7%)
・胃polyposisは胃全体にびまん性の分布。大きさは不揃い。
Cf. 家族性大腸腺腫症では、無数の胃底腺polyp+前庭部腺腫。
Cf. Peutz-Jeghers syndromeでは、散在性に有茎性・分葉状の過誤腫性polyp。
・十二指腸、小腸にもpolyposisあり。大腸はS状結腸-直腸で比較的密にpolypがみられるが、ほかは散在性。
Take Home Massage |
・PTEN hamartoma tumor syndromeの1つであるCowden Diseaseを知る。
疑ったら皮膚・口腔診察、消化管内視鏡、脳を含む全身画像検索、家族歴聴取を。
・MRI T2WIで小脳に“Tiger-stripe pattern”を示す腫瘤を見たらLhermitte-Duclos Diseaseと診断できる。
・CTでは管腔臓器や口腔にも目を向ける。食道polyposisはCowden Diseaseに特徴的。
・診断がついたら悪性腫瘍発生の監視が重要。
参考文献
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