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第 358 回 東京レントゲンカンファレンス[2015年2月26日]
症例2 20歳代 男性 : 下痢、発熱
腸結核
intestinal tuberculosis


 腸結核

【概念・機序・病態
・肺結核などの他臓器結核症から続発した続発性腸結核と、他臓器に結核病巣が認められない原発性腸結核に分類。
・わが国では原発性腸結核の頻度が高い
・男女比は0.79と女性にやや多く、平均年齢は55歳
・ヒト型結核菌(Mycobacterium tuberculosis)の管内性、血行性、リンパ行性、隣接臓器からの直接感染によるが、空気中や喀痰中の菌を嚥下することによる管内性感染が最も多い
・腸管へ移行した菌体は、Peyer板などのリンパ装置に侵入し、結核性の類上皮細胞肉芽腫をつくり結核結節を形成する。
回腸、回盲部、右側結腸に好発し、特にリンパ組織が豊富である回盲部に多い
・自然治癒傾向が強く、活動性と陳旧性の病変が併存する。

【注腸造影所見】
非連続性病変
輪状・帯状潰瘍による狭窄像(String sign)
萎縮瘢痕帯(二重造影法にて半月ひだやfine network patternが消失し、正常粘膜に比べてバリウムが斑状に厚く付着)
・腸管変形(長軸方向の短縮、ハウストラの消失、求心性・対称性狭窄、回盲弁の開大偽憩室形成
・Fleischner sign:回盲弁肥厚・開大と回腸末端部狭窄により反転した傘状の像を呈する造影剤貯留像。
・Stierlin’s sign:線維化のため縮んだ盲腸、回盲弁開大、回腸末端部狭窄により造影剤が貯留せず速く細く流れる像。

【CT所見
非連続性病変
回盲弁、回腸末端および盲腸の壁肥厚
・進行すると偏心性・非対称性の腸管壁肥厚
・腸管周囲に外方増殖性の腫瘤を形成し、近傍の筋に浸潤する場合もあり(悪性腫瘍との鑑別が問題となる)
・粘膜の不整
・腸管変形(長軸方向の短縮盲腸の消失回盲弁の開大
・回腸末端部の狭窄と口側回腸の拡張
・回腸病変は腸間膜付着部対側に好発
・腸管周囲や腸間膜の脂肪織混濁はあっても軽度
腸間膜リンパ節腫大(1.2-4cm)
・リンパ節は乾酪壊死のため内部が低吸収を示し、辺縁が造影される場合が多く(60%)、回復期には石灰化を伴うことがある。
・腹水(結核性腹膜炎の合併)

【確定診断
病変部から結核菌あるいは乾酪性肉芽腫を検出することによるが、いずれの検出率も低い(抗酸・菌染色陽性率、乾酪性肉芽腫検出率ともに10%前後、培養による検出率は23〜86%)。
・補助診断として便培養や胃液培養を行うこともあるが、陽性率は数%と極めて低い。
・生検組織のPCR法による結核菌DNAの検出、抗結核薬投与による治療的診断がなされることもある。

 

 鑑別診断

Crohn病 → 特にCrohn病との鑑別が問題になることが多い
・アメーバ性大腸炎
・エルシニア腸炎
・その他細菌性腸炎
・CMV腸炎
・大腸癌
・悪性リンパ腫
・腸管Behçet病
・サルコイドーシス

 

 まとめ

・腸結核は細菌学的、組織学的に診断することが困難な場合が多く、画像所見のみで診断し治療を行わなくてはならない場合も少なくない。
・特にCrohn病との鑑別は重要で、腸結核をCrohn病と誤診しステロイドや抗TNF-α抗体製剤を投与した場合には、重篤化を招く危険性がある。
・したがって、腸結核やCrohn病の画像的特徴を熟知しておくことが重要と思われる。

 

 


参考文献

  • 垂水研一, 他. 感染性腸炎の最近の知見―腸結核. 胃と腸 2008; 43:1637-44.
  • 清水誠治, 他. 炎症性腸疾患と鑑別困難な感染性腸炎の診断と経過―Crohn 病との鑑別を中心に. 胃と腸 2006; 41: 951-8.
  • 八尾恒良, 他. 最近の腸結核―10年間の本邦報告例の解析. 胃と腸1995; 30: 485-90.
  • Engin G, et al. Imaging findings of intestinal tuberculosis. J Comput Assist Tomogr 2005; 29: 37-41.
  • Vanhoenacker FM, et al. Imaging of gastrointestinal and abdominal tuberculosis. Eur Radiol 2004; 14: E103-15.
  • Akhan O, et al. Imaging of abdominal tuberculosis. Eur Radiol. 2002; 12: 312-23.
  • Makanjuola D. Is it Crohn's disease or intestinal tuberculosis? CT analysis. Eur J Radiol 1998; 28: 55-61.

 


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