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第 358 回 東京レントゲンカンファレンス[2015年2月26日]
症例3 10歳代 男性 : 頭痛、発熱、倦怠感、皮疹
カルバマゼピン(テグレトール)による薬剤性過敏症症候群 DIHS
drug-induced hypersensitivity syndrome


 鑑別

発熱、皮疹、肝脾腫、全身のリンパ節腫大
・反応性リンパ節腫大(サルコイドーシス、薬剤性…)
・悪性リンパ腫(IVL,AILT …)
・感染症

 

 DIHSdrug-induced hypersensitivity syndrome)

【特徴】
・限られた薬剤(抗てんかん薬など)内服後2〜6週後に発症する高熱・多臓器障害を伴う重症型薬疹
・薬剤中止後も遷延し、多くの場合発症2〜3週後にHHV-6の再活性化を認める

【原因薬剤】これらの薬剤にほぼ限られる

カルバマゼピン フェニトイン
ゾニサミド ジアフェニルスルホン
メキシレチン塩酸塩 アロプリノール
バルプロ酸ナトリウム ミノサイクリン塩酸塩
フェノバルビタール サラゾスルファピリジン
ラモトリジン ジルチアゼパム

【疫学】
・原因薬剤を服用した症例の0.01~0.1%に発症
・年齢・性差なし

【症状】
・発熱、点状丘疹、掻痒感、リンパ節腫脹、無唾液症が初発
・Spike fever(+)
・顔面の浮腫、紅斑が下行性に広がる
・SjS/TENと異なり壊死性出血性病変を形成することはない
・薬剤中止後3日目でより重度の症状を示す傾向

【治療】
ステロイド
・40〜60mg/dayを数週かけて漸減 
・急速な減量は症状の再燃に関与
IVIG 血漿交換
・低ガンマグロブリン血症を惹起する恐れ

【予後】
・致死率10%(肝不全か主因)
・長期的には腎不全

 

 DIHS診断基準(2005)

1.限られた薬剤投与後に遅発性に生じ、急速に拡大する紅斑。しばしば紅皮症に移行
2.原因薬剤中止後も2週間以上遷延
3.38度以上の発熱
4.肝機能障害
5.血液学的異常:a、b、cのうち1つ以上
 a.白血球増多(11000/mm3
 b.異型リンパ球の出現(5%以上)
 c.好酸球増多(1500/mm3
6.リンパ節腫脹
7.HHV-6の再活性化

【多臓器障害合併症】
・肝障害、腎障害、糖尿病、肺炎、脳炎、甲状腺炎、心筋炎も生じうる
・重篤な合併症として劇症T型糖尿病、辺縁系脳炎が報告

 

 まとめ

・多小脳回に伴うてんかん発作とテグレトール投薬によるDIHS
・画像所見は非特異的であり、sIL-2Rも上昇することからリンパ腫との鑑別が問題となる
・薬剤投与後4週〜5週後の発熱・皮疹やリンパ節腫脹を伴う臓器障害があればDIHSの可能性も考える

 

 


参考文献

  • Human herpesvirus 6 encephalitis associated with hypersensitivity syndrome. Yasuhiro Fujino Ann Neurol 2002;51:771–774
  • Multimodality imaging of Hodgkin disease and non-Hodgkin lymphomas in children. Toma P Radiographics. 2007 Sep-Oct;27(5):1335-54.
  • Viral connection between drug rashes and autoimmune diseases: How autoimmune responses are generated after resolution of drug rashes. Aota N, Autoimmune review 2009. May;8(6):488-94
  • Recognition of immune reconstitution syndrome necessary for better management of patients with severe drug eruptions and those under immunosuppressive therapy. Shiohara T, Allergol Int 2010 Dec;59(4):333-43.
  • 山本譲司,張替英郎:可溶性インターロイキン 2 受容体―sIL-2R. 診断と治療,97:244-245,2009
  • 橋本公二 Stevens-Johnson 症候群,toxic epidermal necrolysis(TEN)と hypersensitivity syndrome の診断基準および治療指針の研究 厚生科学特別研究事業 平成17年度総括研究報告,2005
  • Epilepsia 2008;49:2108-2112
  • N Engl J Med 1994;331:1272-1285
  • J. Am. Acad. Dermatol 1988;18:721-741

 


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