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第 358 回 東京レントゲンカンファレンス[2015年2月26日]
症例6 70歳代 男性 : 発熱
侵襲性アスペルギルス症
invasive aspergillosis


 全身多発結節の鑑別

× 血管炎―心腔結節が説明できない
× 血栓塞栓―心腔結節の局在、形態が異なる
△ 転移―経過早すぎる、原発巣不明
○ 緑色腫―ただし好発部位(骨病変)を認めない
◎ 感染による全身播種

 

 非弁部心腔内腫瘤の原因病原体

壁在心内膜炎:staphylococci, viridans streptococci, Enterococcus, Salmonella, Bacteroides fragilis, Candida, Aspergillus
結核
真菌:Candida, aspergillus, 接合菌, Malassezia furfurなどで報告

 

 invasive aspergillosis

・Aspergillusはどこにでもいる真菌
・免疫抑制患者では侵襲性全身感染をきたす–高リスク: 好中球減少、ステロイド、広域抗生剤
・大部分は肺より侵入し、全身のあらゆる臓器に血行性播種

診断が困難なことが多い
血液培養はほとんど陽性にならず、コンタミネーションによる偽陽性も多い
・症状、血清学的所見(aspergillus galactmannan, (1→3)-β-glucan)、画像所見から総合的判断が必要
・生検で確定診断

cardiac aspergillosis
免疫抑制状態の肺アスペルギルス症患者で稀に報告
1.心内膜炎
2.心筋炎
3.心膜炎
4.心タンポナーデ
5.心筋梗塞:菌による冠動脈塞栓
6.心筋膿瘍:リング状増強効果
7.心腔内腫瘤

・心腔内腫瘤の画像所見についてまとまった文献なし
・全心腔に発生報告あり
・無茎性、または有茎性腫瘤
壁に食い込む病変もある
 ー真菌の組織破壊性による?

治療
外科的切除+抗真菌薬(1st line: VCZ)
・薬物治療のみでは不十分:死亡率32-56.6%。抗真菌薬の移行性に限界があるため

・再発予防:抗真菌薬VCZ生涯内服継続を多くの文献で推奨
ただし心機能低下、全身状態悪化で耐術困難な例も多く、早期診断と治療が重要

 

 Take home message

・免疫抑制患者の心臓腫瘤の鑑別に、Cardiac aspergillosisが挙がる
・手術の機会を逃さないために、早期診断が重要

 

 


参考文献

  • Chamsi-Pasha H. J Am Soc Echocardiogr 2004, 17:70-72.
  • Rajbanshi BG. Mayo Clin Proc September 2012, 87(9):925-928
  • Paul M. Circulation 2012, 126:1780-1783
  • Vida VL. Circulation 2004, 109:e300-e301.
  • Subramanian M. Int J Cardiovasc Res 2013, 2:6
  • Cornely OA. Bone Marrow Transplantation 2001, 28:899–901
  • Abecasis M. Clin Drug Investig 2013, 33:15-17
  • Bodey GP. Eur J Clin Microbiol Infect Dis, May 1989:413-437

 


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