多発性硬化症 multiple sclerosis |
画像所見のまとめ |
・橋の右外側に細長いT2WI・FLAIR高信号域
・DWIで高信号だが、ADCでは拡散制限なし
鑑別疾患 |
・梗塞(長回旋枝領域)
・HSV、VZV脳炎
・脱髄
・膠原病・血管炎
病変を連続画像で見てみると |
右三叉神経と連続する病変? |
鑑別疾患(三叉神経に沿ったT2延長病変)
・HSV、VZV脳炎
・脱髄(MS)
臨床経過 |
・脳梗塞として治療開始。
・右顔面の麻痺や味覚障害、ふらつきが軽度残存するも、症状は改善し3週間後に退院。
・5か月後に、めまいと右手のしびれが出現し、再度MRI(頭部・頸椎)を撮影。
▼ 5か月後の頭部MRI |
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▼ 5か月後の頸椎MRI |
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・第4脳室周囲,右前頭葉皮質下,頸髄に多発する T2WI高信号病変が出現(空間的・時間的多発) ・抗アクアポリン4(AQP4)抗体陰性 ・臨床上、膠原病や血管炎を疑う所見なし |
臨床診断:多発性硬化症 multiple sclerosis
多発性硬化症(MS) |
・最も頻度の高い自己免疫性脱髄疾患
・原因不明。時間的・空間的に病変が多発
・15〜50歳の発症が多く、男女比は1:1.5
・McDonald(2010年)など様々な診断基準が存在
・脳室周囲、皮質下、視神経、脳幹、脊髄などにT2WI高信号病変
・急性期にはステロイド、再発・進行予防にはINF-βや免疫抑制剤
MSとCIS |
・MSの多くは視神経、脳幹、脊髄などの単一の脱髄病変により発症する。
・この時点ではMSと診断できる時間的多相性がないため、CIS(clinically isolated syndrome)と呼ばれる。
・CISに続いて2度目の脱髄性症状を来し、MSへ進展する。
【MSの三叉神経病変】
・1.0T-MRIでMSの3%(8人/275人中)に三叉神経の異常
ー 異常= T2延長、異常増強効果、三叉神経の腫大
ー 8人中3人に、V3(下顎神経)領域の知覚麻痺
ー その他は無症状
CJ da Silva. Multiple Sclerosis 2005; 282-285
・3.0T-MRIでは、MSの23%(11人/47人中)に三叉神経の異常
ー 11人中6人は両側性
RJ Mills. The British Journal of Radiology 2010; 493–498
・MRIで三叉神経に病変を有するMS患者43人
ー female 27人、male 16人
ー 平均年齢47歳(15-72歳)
ー 初発症状から三叉神経症状まで平均50.5ヵ月(0-252ヵ月)
ー 初発(CIS)…10人(23%)
Charlotte Swinnen, Multiple Sclerosis and Related Disorders 2013; 200–203
結語 |
三叉神経に沿った脳幹の病変を見たら、MSを鑑別疾患に挙げることが重要である。
T2WI /FLAIR/DWI |
参考文献
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