防水スプレー吸入後肺障害 acute lung injury after inhalation of water-proofing spray |
画像所見まとめ |
・上肺野優位にすりガラス状陰影が認められ、一部粒状影が見られる。 |
▼ 入院時胸部造影CT |
びまん性浸潤影・すりガラス影の鑑別 |
・細菌性肺炎 ・ウイルス性肺炎 ・PCP ・心原性肺水腫 ・急性好酸球性肺炎 |
・過敏性肺臓炎 ・薬剤性肺障害 ・ALI/ARDS etc… |
話は遡り、実は・・・
・前医では細菌性肺炎を否定できず、抗菌薬を使用。
・当院受診時(発症約1週間後)のレントゲンですりガラス影はすでに消失していた。
追加の病歴聴取(当院初診時)
・新潟にはスキーをしに行った。
・突然の呼吸苦を発症する前、換気の悪い室内で防水スプレーを使用した。
・防水スプレー使用後、喫煙。喫煙直後に症状増悪。
・喫煙開始や銘柄変更はなし。
最終診断:急性肺障害(防水スプレー吸入による肺障害)
防水スプレーによる肺障害 |
・防水スプレーによる肺障害はフッ素が原因と考えられている.
・症状は,呼吸困難(78%)、咳噺(50%)、酸素飽和度の低下(42%)、嘔気・嘔吐(23%)、発熱(23%)など。
・吸入から発症までの時間は1時間以内が多い。
・一般に予後は良好とされており,入院治療例の80%は10日以内に軽快退院をしているとされる。
慈恵医大誌2000;115:315-9
防水スプレーと喫煙の関係
・フッ素は425-450℃まで加熱されると熱化合物のフュームとなる。この吸入により発熱、肺障害をきたすことが知られており、ポリマーフューム熱と呼ばれる。
・煙草の火は875℃程度まで達し、煙草の熱で発症したポリマーフューム熱の報告もある。
・中毒事故が発生した防水スプレーの粒子径は20-58μmだが、フュームは0.1-10μm程度の粒子径で存在し、より末梢レベルでの肺障害を来しやすい。
気管支学. 2015;37:234-239.
山下ら.防水スプレーについて.中毒研究.1995;8:225-233.
本症例 |
Take Home Message |
・突然発症した呼吸困難で経気道分布を疑わせる所見や肺野末梢がスペアされる所見を見た時は、吸入による肺障害を考える。
・喫煙が防水スプレー吸入による肺障害を増悪させることがある。
参考文献
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