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第 363 回 東京レントゲンカンファレンス[2015年10月22日]
症例2 20 歳代 女性 : 発熱、咳嗽
発作性夜間ヘモグロビン尿症
Paroxysmal Nocturnal Hemoglobinuria:PNH


 鑑別診断

・機械的溶血
・鎌状赤血球症の溶血発作

 

 発作性夜間ヘモグロビン尿症:Paroxysmal Nocturnal Hemoglobinuria:PNH

・後天性の造血幹細胞の疾患
・赤血球の補体感受性が増加し、血管内溶血を生じる
・補体感受性増加の原因
  造血幹細胞のPIG-A遺伝子が変異
  赤血球膜に存在するGPIアンカー蛋白が欠損
  GPIに結合していた補体制御蛋白(CD59,CD55)が欠損
  補体が活性化し、血管内溶血が生じる

 

血管内溶血のLabo data
血管内溶血:LDH↑, AST↑ (感染・薬剤などが契機)

遊離Hb:間接Bil↑ → ハプトグロビンと複合体を形成:ハプトグロビン↓
↓                ↓
糸球体でろ過      糸球体でろ過されない   

腎皮質の近位尿細管で再吸収

酸化されてヘモジデリンへ:皮質低信号

変性崩壊して尿中にはがれ落ちる:尿中ヘモジデリン(+)

 

PNHの腹部MRI所見
➀ 腎皮質の低信号域:腎へのヘモジデリン沈着
➁ 腹部静脈血栓症:静脈の信号↓、肝の信号↓
➂ 輸血ヘモジデローシス:網内系へのヘモジデリン沈着

 

腎の低信号域  2)Jeong JY:Radiographics.2002;22:833-846
  疾患 分布 原因
血管内溶血


PNH
機械的溶血(人工弁)
鎌状赤血球症の溶血発作
皮質


ヘモジデリン沈着


感染

腎症候性出血熱
 ハンタウイルス属による急性感染性腎炎
髄質

うっ血と出血

血管病変




腎静脈
 急性腎静脈血栓症
腎動脈
 急性腎皮質壊死:細い動脈
 腎動脈梗塞:太い動脈

髄質

皮質内側
皮質・髄質両方

うっ血と出血

壊死
壊死


鉄沈着のMRI所見  3)Queiroz-Andrade M:Radiographics.2009;29:1575-1589
  骨髄 原因
Reticuloendothelial
(網内系)

    頻回輸血
血管外溶血
 鎌状赤血球症
Parenchymal(実質)


  鉄吸収↑
 一次ヘモクロマトーシス
 赤血球産生不全による
  慢性貧血
Renal(腎)

 

  血管内溶血
 PNH
 鎌状赤血球症の溶血発作
Mixed(混合型) (○) (○) PNH+頻回輸血
鎌状赤血球症+溶血発作

 


 まとめ

・腎皮質が低信号を示すPNHの1例を経験した。
・腎皮質の低信号を見たら、溶血性貧血を鑑別に挙げる。
・また、他臓器の低信号や血管病変にも注意する。



参考文献

  • Mathieu D. Blood. 1995;85:3283-3288.
  • Jeong JY. Radiographics. 2002;22:833-846.
  • Queiroz-Andrade M. Radiographics. 2009;29:1575-1589.