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東京レントゲンカンファレンス TOP症例一覧 第363回症例症例:呈示
第 363 回 東京レントゲンカンファレンス[2015年10月22日]
症例7 60歳代 女
神経内分泌腫瘍(カルチノイド)
neuroendocrine tumor G1 

 

 鑑別診断

・悪性リンパ腫
・乳頭状腎細胞癌
・傍糸球体細胞腫
神経内分泌腫瘍(カルチノイド)
  ー由来は不明(幹細胞から?)
  ー40-50代に好発、男女差なし
  ー馬蹄腎(25%)や奇形腫(20%)に合併
  → 早期濃染するのでは……?
  ー腎原発のものは一般に造影効果が弱い
  ー石灰化の頻度は約25%
  ※合併する奇形腫によるものも含まれる
  → (教科書的とは言えないが)否定する理由はない
・後腎性腺腫

 

 まとめ

腎原発神経内分泌腫瘍(カルチノイド)あるいは、(非淡明細胞型)腎細胞癌

後腹膜鏡下右腎摘出術施行

病理  
肉眼像 HE染色
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  chromogranin/synaptophysin
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診断:Neuroendocrine tumor, G1(carcinoid)

 

 

 腎カルチノイド

・一般に神経内分泌腫瘍の発生部位は、消化器系(約80%)> 呼吸器系 > その他(5%以下)
・偶然発見されることが多い、症状も非典型的 ※カルチノイド症候群は非常に稀
馬蹄腎に合併しやすい(約25%)
・奇形腫と共存しやすい(約20%)

US:高エコー腫瘤、不完全な無〜低エコー被膜 ※時に石灰化が見られることがある

CT:不均一で増強効果の弱い境界明瞭な腫瘤 ※時に石灰化を伴う

RI:111-In-octreotideシンチグラフィが有用 ※オクトレオチド:ソマトスタチンアナログ

・治療は基本的に外科的切除
・完全切除することができれば予後良好
・しかし、半数程度は初発時に転移を伴っている
・放射性ソマトスタチンアナログ投与も効果あり

本症例は転移なし、術後3年半無再発生存中。

 

 終わりに
  1. 拡散制限が強く、かつ、T2強調像で高信号を示す腎腫瘤の鑑別としてカルチノイドが挙がる。
  2. 腎原発のカルチノイドは初発時に転移を伴っていることが多いので注意する必要がある。



参考文献

  • 長嶋洋治ら, 腫瘍病理鑑別診断アトラス腎癌, 2013: 131-133.
  • Ayodeji O. Omiyale, et al. Advances in Urology. 2013: 579396.
  • Choi YA, et al. American Journal of Roentgenology. 2014; 203: 78-84.
  • Egbert ND, et al. American Journal of Roentgenology. 2013; 201: 347-55.
  • Ferran Algaba, et al. European Urology. 2011; 60: 634-643.

     

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Moderator: 若林 祐