膀胱自然破裂 spontaneous bladder rupture |
膀胱破裂 |
膀胱破裂の分類と破裂形式
【病因による分類】
➀外傷性破裂
➁自然破裂:非外傷性の全ての膀胱破裂
【破裂形式】
➀腹腔外破裂:60%
➁腹腔内破裂:30%
➂腹腔内外破裂:10%
膀胱自然破裂の好発部位と原因
【好発部位】
・膀胱頂部の腹膜付着部が最多:支持組織がなく脆弱性のため
*外傷は膀胱頸部に多い
【原因】
・膀胱壁の脆弱化:放射線照射・膀胱炎・膀胱癌など
・膀胱過伸展:前立腺肥大・大量飲酒・神経因性膀胱など
*死体膀胱での実験では、充満のみで膀胱破裂を来たすには約2000mlを要した。
BakonSK:J Urol 1943;49:432-5 ⇒本症例は過伸展と壁の脆弱性が混在して破裂した可能性がある
膀胱破裂の診断
【CT所見】
・腹水貯留
・膀胱壁の形状不整
・その他に腹水の原因が特定できない
【確定診断】
・膀胱造影または腹部造影CT:造影剤の膀胱外溢流所見
・膀胱鏡検査:破裂孔の同定
⇒いずれも偽陰性の可能性あり
*膀胱造影の際には250ml以上の造影剤を注入する必要がある
Peters PC:Intraperitoneal ruputure of the bladder. Urol Clin North Am 1989; 16:279-82
膀胱破裂の血液検査所見
・WBC,CRPの上昇
・BUN,Cre,Kの上昇
*pseudo-renal failure:腹膜を介した尿の再吸収により急性
腎不全に類似した所見を呈する
EI Hay Z, Stein L:A case report S Afr Med J 1983; 64:835-6 *発症直後にはpseudo-renal failureの所見が認められない事もあるが
24時間以上経過するとほぼ全例に異常値を認めるとの 報告がある
Hyens CF and Riemengton PD:BrJ Urol 60:217-222,1987
膀胱破裂の治療
・腹腔外破裂:保存的加療(尿道留置カテーテル)
・腹腔内破裂:手術(原則)
保存的加療(尿道留置カテーテル)
Corriere JN Jr, Sandler CM:World J Urol 1999; 17:84-9 *開腹したものの破裂部位が明らかではない症例や、外科的修復術を施行しても再発を防げない症例も散見される Makoto Iwasaki,Masataka Kobayashi et al.Jpn J Urol Surg 2013:1137-39
Take home message |
・急性腹症の患者において多量腹水を認め、腹腔内に明らかな原因を特定できない場合は、膀胱破裂を念頭に置く必要がある
・偽性腎不全の所見は診断の補助になる
・破裂を証明する膀胱造影では250ml以上の造影剤を注入する必要がある
参考文献