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東京レントゲンカンファレンス TOP症例一覧 第370回症例症例:呈示
第 370 回 東京レントゲンカンファレンス[2016年9月29日]
症例1 40歳代 男性
髄外造血
extramedullary hematopoiesis

 

  画像所見
   
CT
傍椎体領域多発充実性腫瘤
椎間孔への進展を認めない

MRI
・T1WI、T2WIとも不均一な高信号。
・内部に不均一な造影効果。
・脂肪抑制で低信号を示す脂肪成分がある
画像
 鑑別診断

神経原性腫瘍
 末梢神経由来
(神経鞘腫、神経線維腫、悪性神経鞘腫)
 交感神経節由来(神経節細胞腫、神経節芽細胞腫、神経芽細胞腫)
 傍神経節由来(傍神経節腫)

髄外造血/骨髄脂肪腫

 

 病理診断

画像

正常造血組織に類似

 

解答:髄外造血骨髄脂肪腫

 

  まとめ

●傍椎体領域多発充実性腫瘤
  脂肪を含む場合には髄外造血、骨髄脂肪腫も鑑別に挙げる。

●患者背景
  血液疾患⇒髄外造血、HT・DM⇒骨髄脂肪腫

 

  髄外造血

・骨髄以外の臓器(脾、肝、リンパ節、副腎、後縦隔など)に異所性に正常な血液細胞が形成・増殖される状態。
・縦隔発生は一般に後縦隔、下部胸椎(Th7以下)、多発、両側性が多い。
・発生機構として、
 ➀骨髄がヘルニア化し髄外へ直接進展、
 ➁胎生期の骨髄の遺残、間葉系細胞が造血細胞へ分化、
 ➂造血幹細胞の塞栓 など
 が提唱されている。

血液疾患との関連
・殆どが慢性貧血(溶血性貧血)、骨髄線維症、MDS、真性多血症、白血病、リンパ腫などの血液疾患が背景とする。
・髄外造血11例中10例に血液疾患(貧血5例、MF・MDS 4例、骨髄増殖性疾患1例)を認めた。
 背景血液疾患がない症例は仙骨前領域発生1例のみであった。
・背景血液疾患のない後縦隔発生の髄外造血症例は英語文献で2例、日本語文献で1例の報告がある。

Skeletal Radiology 2012; 41(8): 911-916.
Diagn Interv Imaging. 2014; 95(4): 457-460.
Ann Thorac Surg.  1980; 30(6): 584-587.
日呼外会誌 1990; 4: 76-87.

  骨髄脂肪腫

・成熟脂肪細胞と正常骨髄系細胞からなる良性腫瘍。
・副腎外が約15%。副腎外では約半数が仙骨前面に発生。胸壁内が13%、縦隔は約8%。胃、肝、膀胱での発生もある。
・縦隔発生は一般に後縦隔、片側性、孤在性が多い。
・発生原因として➀胎児期の骨髄の遺残、➁骨髄細胞の塞栓、➂副腎のreticulum cellの異形成などが挙げられる。

背景疾患
・高血圧、糖尿病、アルコール性肝障害といった基礎疾患を有することが多い。
 これらの疾患に伴う微小出血などの組織壊死が骨髄脂肪腫様変性を引き起こすとされている。
・実際には「造血刺激がない(≒血液疾患がない)」ということが、診断の根拠となるケースが多い。

今回の症例も骨髄脂肪腫?

治療
・髄外造血、骨髄脂肪腫とも、将来的に増大する可能性がある点、
 術前診断が困難(多くは神経原性腫瘍と診断)である点から、切除される場合が多い。
・病変が小さく無症状であれば、保存的治療可。

神経原性腫瘍(神経鞘腫)との鑑別点
・血液疾患⇒髄外造血、HT・DM⇒骨髄脂肪腫
・脂肪成分の存在が示唆される
・椎間孔の開大、脊柱管内への進展がない

患者背景と画像診断で外科的切除の適応を見極める



参考文献

  • 縦隔腫瘍の画像診断と病理(第2版)
  • 荒能 義彦ら 日呼外会誌 1990; 4: 76-87.
  • Andrew WG et al. Skeletal Radiology 2012; 41(8): 911-916.
  • 江花 弘基ら 肺癌 2012; 52: 397-401.
  • 橋本 昌樹ら 日呼外会誌 2013; 27: 86-90.

 

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Moderator: 名川 恵太