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東京レントゲンカンファレンス TOP症例一覧 第372回症例症例:呈示
第 372 回 東京レントゲンカンファレンス[2016年11月24日]
症例3 10歳代 男性
巨細胞腫
giant cell tumor

 

 この症例でのポイント1
     
・10歳代
・ひだり橈骨遠位骨幹端部病変
   
・骨髄偏心性
・膨隆性変化
・辺縁性状は境界明瞭で骨硬化なし
・内部の骨破壊が均一
・一部皮質の菲薄化あり
・辺縁分葉状の変化
・骨膜反応なし

いづれも 巨細胞腫を考える所見

 

 この症例でのポイント2

・骨巨細胞腫の発生は骨幹端から発生し骨端方向へと広がる。
・骨端線が閉鎖していないと骨端方向へ広がることはできない。

 

 骨巨細胞腫

・原発性骨腫瘍の3〜7% (Zhang)
・男女比は女性にやや多いとの報告が散見されるが、日本での登録者数では男女差なし
 好発年齢は20〜40歳台で15歳以下での登録は非常に少ない
・良性だが局所侵襲性が強い
・悪性あるいは悪性転化は1%未満

日本整形外科学会骨軟部腫瘍委員会
全国骨腫瘍登録一覧表(平成19年度)
総数 男性 女性
2126 1074 1052
(昭和47年〜平成15年)
Zhang Z, et al: J Neurooncol (2013) 115: 437

・好発部位は長管骨の骨端部から骨幹端で骨髄偏心性に生じる。
 発生部位は大腿骨遠位部、脛骨近位部、橈骨遠位部の順に多く、扁平骨では仙骨と脊椎椎体での発生が多い。
Dahlin DC : AJR (1985) 144: 955

【単純写真・CT】
・骨幹端から骨端線を越えて骨端に及ぶ骨髄偏心性の溶骨性病変
・境界は明瞭なことも不明瞭なことも
・辺縁に骨硬化なし、あっても一部分のみ
・骨皮質は辺縁で菲薄化や膨隆を伴い、骨外進展を示唆する骨欠損像があることも
・内部に石灰化を認めることは稀
・病変内に出血や壊死をきたした場合は吸収値が不均一になる


 鑑別疾患

修復性巨細胞肉芽腫
【CT】
・膨張性発育、辺縁平滑な溶骨性変化、多彩な吸収値、不均一な増強効果
 内部に石灰化に伴う高吸収の点状構造を有することあり
【MRI】 
・T2強調像で著明な低信号・・・ヘモジデリン沈着、線維化、反応性骨形成
・通常は嚢胞成分は見られない

動脈瘤様骨嚢腫
・原発性骨腫瘍の1〜6% 長幹骨骨幹端部、椎体に好発
10代から20代に好発(GCTより若年)
【CT】
・板間層を押し広げる多房性嚢胞性病変や液面形成
 被膜や内部隔壁に増強効果
【MRI】
・T2強調像で内部隔壁や線維性被膜は低信号
・嚢胞内容はT2強調像で高信号、T1強調像で低〜中間信号

骨肉腫
・原発性骨悪性腫瘍の20%
・発症ピークは10〜20歳台
・成長期の骨幹端部(大腿骨遠位, 脛骨近位)に好発
【CT・CR】
・境界不明瞭な溶骨性変化、造骨性変化、あるいは両者が混在
種々の骨膜反応を伴う
・骨皮質は破壊され骨外腫瘤を伴うことも
【MRI】
・骨形成、壊死や出血などにより種々の信号強度を示す。
・罹患骨の骨髄内に飛び石状の転移巣を認めることがある。

 

 まとめ

・若年者にも骨巨細胞腫が発生する可能性がある。
・骨巨細胞腫は骨幹端部発生である。
・骨端線が閉鎖していない場合には骨端部病変として存在する。



参考文献

  • 浜中恭代.The Bone vol.13, No2 p101-103
  • 佐藤嘉尚.臨床画像 vol.29, No32 p59-72

 

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Moderator: 片瀬 七朗