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第 373 回 東京レントゲンカンファレンス[2017年1月26日]
症例2 70歳代 男性 : 脳梗塞スクリーニング
成人型アレキサンダー病
Adult-onset Alexander disease


 MRIのまとめ

・延髄から頚髄に及ぶ萎縮
・延髄(下オリーブ核)の両側性のT2WI高信号
・橋の萎縮はない
・白質病変はほぼ認めない

 

 延髄を含む脳幹萎縮の鑑別

 鑑別診断  特徴的な所見
 Adult-onset Alexander disease
AJNR Am J Neuroradiol. 2008;29(6):1190-6. 
 延髄+上位頚髄の萎縮
 Behcet disease
J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2010;81(11):1292-3. 
 橋の萎縮が強い
Pan Afr Med J. 2015;20:51. 
 Spinocerebellar degeneration  脳幹+小脳萎縮
 Adult polyglucosan body disease
Brain. 2008;131:2321-31. 
 延髄、脊髄の萎縮+白質病変
Ann Neurol. 2012;72(3):433-41. 

 

 アレキサンダー病

・病理学的にグリア線維酸性蛋白(GFAP)などから構成されるRosenthal fiberの蓄積によって特徴づけられる
・原因遺伝子として、GFAP遺伝子が明らかになり、遺伝子検査が診断に必要

・発症時期により、以下の3型に分類
・乳児型(生下時〜2歳):最も高頻度 
・若年型(2歳〜10代):
・成人型(10代以降): 
・緩徐進行性の錐体路症状、運動失調、口蓋ミオクローヌス、自律神経障害など

アレキサンダー病の画像所見
1.前頭葉優位の白質病変
2.側脳室周囲のT2WIで低信号の縁取り
3.基底核、視床の異常信号
4.脳幹病変
5.異常増強効果
AJNR Am J Neuroradiol. 2001;22(3):541-52成人型はこれを満たさない症例が多い

成人型アレキサンダー病のMRI所見 頻度
著明な延髄の萎縮 37/42(88%)
白質の異常 21/43(49%)
脳幹の信号異常 16/36(44%)

・延髄から頚髄に及ぶ萎縮かつ橋は保たれる所見→成人型に非常に特異的である
BMC Neurol. 2010;1:10-21.

成人型アレキサンダー病の臨床像
・平均発症年齢は30代後半
・家族内発症例(常染色体優性遺伝)は半数
BMC Neurol. 2010;1:10-21.・症状は多彩
・無症候性や、剖検で初めて確認された症例もある
・アルコール多飲などのストレスを契機に症状が進行
J Neurol Sci. 2013;331(1-2):152-4.
J Neurol Sci. 2015;354(1-2):131-2.

 

 Take Home Message

・臨床像が多様であり、診断を困難にさせるが、MRIの所見は共通である
・MRIの所見を以って、遺伝子検査を勧めることが可能で、診断できるカギとなりうる

 


参考文献

  • Farina L, et al. AJNR Am J Neuroradiol. 2008;29(6):1190-6.
  • Ayaki T, et al. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2010;81(11):1292-3.
  • Mohamed C, et al. Pan Afr Med J. 2015;20:51.
  • Pareyson D, et al. Brain. 2008;131:2321-31.
  • Mochel F, et al. Ann Neurol. 2012;72(3):433-41.
  • van der Knaap MS, et al. AJNR Am J Neuroradiol. 2001;22(3):541-52.
  • Namekawa M, et al. BMC Neurol. 2010;1:10-21.
  • Schmidt H, et al. J Neurol Sci. 2013;331(1-2):152-4.
  • Sugiyama A, et al. J Neurol Sci. 2015;354(1-2):131-2.