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第 373 回 東京レントゲンカンファレンス[2017年1月26日]
症例6 30歳代 男性 : 胸背部痛
胸腺腫
thymoma


 臨床・画像所見のまとめ

・突然の胸痛
・前縦隔の周囲脂肪織濃度上昇を伴う軟部濃度腫瘤
・辺縁のみが増強される
・粗大な脂肪や石灰化なし
・胸水
・経過で縮小、胸水も減少

 

 鑑別診断

・急性の経過 → 感染、破裂や血管性のイベント?
・奇形腫の破裂
・胸腺嚢胞や気管支原性嚢胞への出血、感染
・胸腺腫など腫瘍の梗塞

診断:Necrotic thymoma, type A or AB(大部分が壊死に陥った胸腺腫)

 

 胸腺腫の壊死

・Moranらは切除例 25/600 例で、広範な壊死、出血、嚢胞変性を認めたと報告1)
・梗塞部は血管閉塞や血栓とよく関連していたとしている1)
・しかし本邦での、壊死を伴い自然縮小した11例の報告では、大部分で血管の閉塞病変は認められなかった2)
1)Moran CA, et al. Am J Surg Pathol 2001;25:1086-90.
2)佐藤泰介ら. 日本胸部臨床 2010;69巻2号:168-171.

 

 壊死性胸腺腫の臨床・画像所見

・突然の胸痛、発熱
・平均6cm程度
・嚢胞様の造影不良域、周囲脂肪織濃度上昇、胸水
・単純CTで層状の構造
・T1WIで凝固壊死を反映する高信号、層状構造
・経過での縮小、胸水の消退
・多くが正岡分類T/U期、予後良好1)

 


参考文献

  • Moran CA, et al. Am J Surg Pathol 2001;25:1086-1090.
  • 佐藤泰介ら. 日本胸部臨床 2010;69:168-171.
  • Furuya K et al. Mol Clin Oncol 2015;3:1058-1062.
  • 片岡瑛子ら. 日本呼吸器外科学会雑誌 2015;29:627-631.