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東京レントゲンカンファレンス TOP症例一覧 第373回症例症例:呈示
第 373 回 東京レントゲンカンファレンス[2017年1月26日]
症例3 10歳代 男性
膵充実性偽乳頭状腫瘍
solid-pseudopapillary neoplasm of pancreas

 

 画像所見のまとめ

・膵頭部の境界明瞭な腫瘤性病変(充実成分と嚢胞成分の混在)が存在し5か月の経過でほぼサイズ変化を認めない
 →外傷性血腫の他、腫瘍性病変も鑑別に考えられる。
・スポーツ受傷5日後のMRIで腫瘤内部にT1WI高信号が認められ経時的に低信号化した。
 →信号変化からスポーツでの受傷により出血を起こしたと考えられる。

受傷日(紹介5ヶ月前)/受傷5日後/当院紹介時/当院紹介時

 

 鑑別: 出血性変化をきたす膵腫瘤

非腫瘍性
・外傷性血腫(Chronic expanding hematoma)

腫瘍性
・Solid pseudopapillary neoplasm of the pancreas
・腺房細胞癌: Acinar cell carcinoma
・破骨細胞型巨細胞性腫瘍: Osteoclastic giant cell tumor of the pancreas

 

診断・治療目的に膵頭十二指腸切除術
(PD: pancreatoduodenectomy)が施行された。

最終診断 Solid pseudo-papillary neoplasm of the pancreas

 

 Solid pseudo-papillary neoplasm of the pancreas(SPN)

概念
・1959年Frantzにより初めて報告された分化方向不明な上皮性腫瘍。
疫学
・膵腫瘍全体の0.13−2.7%と比較的まれである。
・若年女性に好発(女性が全体の86.8%、男性は13.2%)。
症状
腹痛が最多(39.7%)、無症状(23.5%)で発見されることもある。
治療・予後
・根治的手術が第一選択。
・比較的予後良好な膵腫瘍とされるが稀に再発例もありmalignant potentialを有する。
秋元ら;膵臓 31:135~144,2016
吉岡ら;胆と膵VoL 22(1)p.45~52,2001
病理
マクロ:厚い線維性被膜に覆われた球形腫瘍で、充実部出血壊死性の嚢胞部分が共存している。
ミクロ:結合性の弱い形態学的に均一な上皮性腫瘍細胞からなる。
Klöppel G et al:WHO Classification of Tumours of the Digestive System,
 4th edition, IARC Press, Lyon, 2010, p327-330
画像所見
・若年女性の膵尾部腫瘤
・充実部と嚢胞部分が様々な割合で混在
・線維性被膜がT2WIでrimの低信号
・出血性変化
・石灰化(30%程度)

 

 外傷を契機に発見されたSPNの報告

  年齢・性別 局在/サイズ 受傷内容
SL Mirapoğlu et al (2016) 9歳・女児 体尾部/12cm ブランコが腹部にぶつかり受傷
Spătaru RI et al (2014) 15歳・女児 頭部/12cm 軽微な腹部外傷(詳細不明)
N Vassos et al (2013) 15歳・女児 体尾部/1cm 落下後 
Tajima et al (2012) 12歳・女児 頭部/12cm 器械体操中に腹部を受傷
HL Huang et al (2005) 19歳・女性 尾部/8cm 交通外傷
本症例 10歳代・男児 頭部/6cm スポーツ中の受傷
      その他にも報告例あり

SPNは病理学的に結合性の弱い組織で構成されている為
些細な外力で出血を起こしうると考えられる。SL Mirapoğlu et al; Mol Clin Oncol. 2016 Nov;5(5):587-589
Spătaru RI et al; Rom J Morphol Embryol. 2014;55(4):1497-501
N Vassos et al ; Int J Clin Exp Pathol. 2013; 6(6): 1051-1059
Tajima et al; Surg Today (2012) 42:776–780
HL Huang et al; World J Gastroenterol 2005;11(9):1403-1409

 

 Take home messages

・SPNは病理学的に結合性の弱い上皮性腫瘍であるため、些細な外力でも出血を起こしうる。
・外傷後というストーリーであったとしても、血腫以外の可能性も考慮する必要がある。



参考文献

  • 秋元 悠 ら;膵臓 31:135〜144,2016
  • 吉岡 正智 ら;胆と膵VoL 22(1)p.45〜52,2001
  • 長谷川 圭 ら;膵臓 28:67〜73,2013
  • SL Mirapoğlu et al; Mol Clin Oncol. 2016 Nov;5(5):587-589
  • Yoshitsugu Tajima et al; Surg Today (2012) 42:776−780

 

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Moderator: 木村 浩一朗