膵充実性偽乳頭状腫瘍 solid-pseudopapillary neoplasm of pancreas |
画像所見のまとめ |
・膵頭部の境界明瞭な腫瘤性病変(充実成分と嚢胞成分の混在)が存在し5か月の経過でほぼサイズ変化を認めない
→外傷性血腫の他、腫瘍性病変も鑑別に考えられる。
・スポーツ受傷5日後のMRIで腫瘤内部にT1WI高信号が認められ経時的に低信号化した。
→信号変化からスポーツでの受傷により出血を起こしたと考えられる。
受傷日(紹介5ヶ月前)/受傷5日後/当院紹介時/当院紹介時 |
鑑別: 出血性変化をきたす膵腫瘤 |
非腫瘍性
・外傷性血腫(Chronic expanding hematoma)
腫瘍性
・Solid pseudopapillary neoplasm of the pancreas
・腺房細胞癌: Acinar cell carcinoma
・破骨細胞型巨細胞性腫瘍: Osteoclastic giant cell tumor of the pancreas
診断・治療目的に膵頭十二指腸切除術 (PD: pancreatoduodenectomy)が施行された。 |
最終診断 Solid pseudo-papillary neoplasm of the pancreas
Solid pseudo-papillary neoplasm of the pancreas(SPN) |
概念
・1959年Frantzにより初めて報告された分化方向不明な上皮性腫瘍。
疫学
・膵腫瘍全体の0.13−2.7%と比較的まれである。
・若年女性に好発(女性が全体の86.8%、男性は13.2%)。
症状
・腹痛が最多(39.7%)、無症状(23.5%)で発見されることもある。
治療・予後
・根治的手術が第一選択。
・比較的予後良好な膵腫瘍とされるが稀に再発例もありmalignant potentialを有する。
秋元ら;膵臓 31:135~144,2016
吉岡ら;胆と膵VoL 22(1)p.45~52,2001 病理
マクロ:厚い線維性被膜に覆われた球形腫瘍で、充実部と出血壊死性の嚢胞部分が共存している。
ミクロ:結合性の弱い形態学的に均一な上皮性腫瘍細胞からなる。
Klöppel G et al:WHO Classification of Tumours of the Digestive System,
4th edition, IARC Press, Lyon, 2010, p327-330
画像所見
・若年女性の膵尾部腫瘤
・充実部と嚢胞部分が様々な割合で混在
・線維性被膜がT2WIでrimの低信号
・出血性変化
・石灰化(30%程度)
外傷を契機に発見されたSPNの報告 |
年齢・性別 | 局在/サイズ | 受傷内容 | |
SL Mirapoğlu et al (2016) | 9歳・女児 | 体尾部/12cm | ブランコが腹部にぶつかり受傷 |
Spătaru RI et al (2014) | 15歳・女児 | 頭部/12cm | 軽微な腹部外傷(詳細不明) |
N Vassos et al (2013) | 15歳・女児 | 体尾部/1cm | 落下後 |
Tajima et al (2012) | 12歳・女児 | 頭部/12cm | 器械体操中に腹部を受傷 |
HL Huang et al (2005) | 19歳・女性 | 尾部/8cm | 交通外傷 |
本症例 | 10歳代・男児 | 頭部/6cm | スポーツ中の受傷 |
その他にも報告例あり |
SPNは病理学的に結合性の弱い組織で構成されている為
些細な外力で出血を起こしうると考えられる。SL Mirapoğlu et al; Mol Clin Oncol. 2016 Nov;5(5):587-589
Spătaru RI et al; Rom J Morphol Embryol. 2014;55(4):1497-501
N Vassos et al ; Int J Clin Exp Pathol. 2013; 6(6): 1051-1059
Tajima et al; Surg Today (2012) 42:776–780
HL Huang et al; World J Gastroenterol 2005;11(9):1403-1409
Take home messages |
・SPNは病理学的に結合性の弱い上皮性腫瘍であるため、些細な外力でも出血を起こしうる。
・外傷後というストーリーであったとしても、血腫以外の可能性も考慮する必要がある。
参考文献
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