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第 375 回 東京レントゲンカンファレンス[2017年4月27日]
症例6 40歳代 男性 : 右頸部痛・腫脹
Lemierre 症候群
Lemierre syndrome


 Lemierre 症候群:Lemierre syndrome

@ 背景
(1) 歴史的経緯
・1936年にLemierreが報告:健康な若年者に多い。抗生剤の登場以前であり、死亡率90%
・抗生剤の登場により、激減:“forgotten disease”と呼ばれた
・近年、増加傾向:上気道炎の治療に抗生剤を使用しない、耐性菌の増加、単に論文報告が増えただけなど様々な原因が考えられている

(2) 診断基準の混乱
・様々な診断基準1):厳しいものから、緩いものまで 
“様々なLemierre症候群”が存在
・診断基準の1例
 Riordanの基準1)
  1) 4週間以内の先行する口腔咽頭疾患
  2) 血栓性内頸静脈炎 or Fusobacterium necrophorum/Fusobacterium spの同定
  3) 転移性病変
1) Riordan T. Clin Microbiol Rev. 2007;20:622-659.
A 概念
 (1) 先行感染
 ・部位2):頭頸部〜その他の領域  狭いところから、広いところまで
   頭頸部
   咽頭・扁桃(67%)
   胸部(25%)
   喉頭
   耳鼻科領域・・・中耳/乳突洞 副鼻腔
   眼窩
  その他の領域
   消化管
   口ピアス
2) Karkos PD. Laryngoscope. 2009;119:1552-1559.
 ・起因病原体:細菌
   Fusobacterium necrophorum
    嫌気性のグラム陰性桿菌
    口腔内、上気道、腸管などの常在菌
    起因菌では最多
   その他の細菌
   起因菌を同定できない場合あり
    抗生剤の使用?
 ・治療:抗生剤
 ・画像診断
   先行感染部位の同定 
   CT/MRI
    扁桃腫大(膿瘍) 咽後膿瘍
    副鼻腔炎 乳突洞炎 耳下腺炎

  (2) 内頸静脈の血栓性静脈炎
  ・先行感染部位から内頸静脈に波及する経路:不明
    静脈
    筋膜
    リンパ路
  ・治療
    抗凝固療法:議論あり
  ・画像診断3)
    CT
     非造影・・・血栓が高吸収
     造影・・・静脈内の造影不良域
          静脈壁に一致したリング状増強
          静脈拡張
 3) 百島 尚樹. 耳鼻臨床. 2001;94:1033-1037.
    US
     新鮮血栓は低エコー
     静脈の圧迫不良
    MRI
     T1WI, T2WIで血栓が高信号

  (3) Septic emboli
  ・頻度4)
          79-100%
    関節    13-17%
   4) 宇津木 春枝. 呼と循. 2012;60:433-437.
  ・画像診断 
   遠隔感染巣の同定
    胸部単純レントゲン写真  
     肺野の多発結節影 胸水
    CT  
     肺の多発結節・空洞性病変 肝・腸腰筋膿瘍

 

 Conclusion

・Lemierre症候群の1例を報告した
・単純CTで血栓の高吸収域を見逃さない
・Septic pulmonary embolismは頻度の高い合併症である
・様々な定義があることに注意する


 

 


参考文献

  1. Riordan T. Clin Microbiol Rev. 2007;20:622-659.
  2. Karkos PD. Laryngoscope. 2009;119:1552-1559.
  3. 百島 尚樹. 耳鼻臨床. 2001;94:1033-1037.
  4. 宇津木 春枝. 呼と循. 2012;60:433-437.