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東京レントゲンカンファレンス TOP症例一覧 第375回症例症例:呈示
第 375 回 東京レントゲンカンファレンス[2017年4月27日]
症例4 40歳代 女性
膀胱傍神経細胞腫
paraganglioma of bladder

 

 画像所見

画像所見のまとめ MRI
・膀胱頂部の粘膜下腫瘍
T2強調像で比較的高信号
・出血を伴っている
・出血のため造影効果の評価は困難

画像所見のまとめ CT
・単純CTでは非特異的な軟部結節
・中心部に小さな石灰化
・造影CTで比較的明瞭な増強効果

 

膀胱の傍神経節腫
paraganglioma of bladder

 

経過
・MRIで傍神経節腫の疑い、全身麻酔下に生検(TUR-Bt)
・易出血性、一過性に血圧上昇あり、218/149mmHgまで上昇
・その後の摘出(膀胱部分切除術)では 問題なく終了

 

尿中ホルモン検査
アドレナリン:0.05ng/mL(0〜0.10)
ノルアドレナリン:0.66ng/mL↑ (0.10〜0.50)
ドーパミン:0.02ng/mL(0〜0.03)

I-123-MIBG 全身planar
 
I-123-MIBG SPECT横断像 I-123-MIBG SPECT冠状断像
生検 H-E染色  
・腫瘍細胞が多数の胞巣を形成
・Zellballen配列
・胞巣の周囲に血管線維性隔壁
   
摘出標本 肉眼像  
:腫瘍部分
   
摘出標本  
chromogranine A染色
・胞巣部分に一致して陽性所見あり
synaptophysin染色
胞巣部分に一致して陽性所見あり
   

 

 膀胱傍神経細胞腫:paraganglioma of bladder

【概念】
・膀胱排尿筋内の交感神経叢に存在するクロム親和性細胞由来 → 粘膜下腫瘍
・膀胱壁のどこにでも生じうる
・膀胱腫瘍の0.05%以下
・傍神経節腫の全体の0.1%

【疫学】
・性差:女性にやや多い
・幅広い年齢層に発生(10〜78歳)
・MENU型、von Hippel-Lindau病、Sturge-Weber病、神経線維腫症T型、結節性多発症、Carney3徴(傍神経節腫、肺軟骨腫、GIST)に合併することあり

【臨床症状】
・カテコラミン分泌による血圧上昇、頭痛、動悸、頻脈、発汗など
・膀胱発生の場合は約半数で排尿時に症状誘発、一過性意識消失も
・約27%の症例はホルモン活性なし
・膀胱発生ではしばしば血尿も認められる

【画像所見 CT】
・境界明瞭な類円形の軟部腫瘤
・しばしば内部に出血や壊死を伴う
・10%にリング状の辺縁石灰化
・造影剤による濃染(dynamic造影では早期から)

【画像所見 MRI】
・T1強調像:低〜淡い高信号
・T2強調像:比較的高信号
・大きいとsalt & pepper appearance
・ADCは低下傾向
・CTと同様に造影剤により濃染

【画像所見 I-123-MIBGシンチ】
・感度83〜100%、特異度95〜100%
・感度 MRI 88% > MIBG 64%の報告
・全身の転移検索に有用:副腎外で悪性5〜18%、病理で良悪性の判別は困難

【病理】
・豊富な細胞質をもつ好酸性腫瘍細胞が 多数の胞巣を形成 = Zellballen配列
・胞巣周囲に血管線維性隔壁あり
・腫瘍細胞はchoromo-granine A,synaptophysin,CD56,NSE陽性
・隔壁はSー100蛋白陽性

 

 膀胱粘膜下腫瘍の鑑別

・平滑筋腫・・・T2強調像で信号
・神経線維腫・・・T2強調像でtarget sign

 

 Take Home Message

T2強調像で高信号を示す膀胱粘膜下腫瘍→傍神経節腫を鑑別に挙げる
・不用意な生検、TUR-Btで大量出血や 高血圧発作を起こす可能性があるため、本症の可能性を臨床医に示す事が重要

 



参考文献

  • Fraser W. Loveys, et al: Urinary bladder paraganglioma. RadioGraphics 2015; 35: 1433-1438
  • She-Meng Cheng, et al: Intraluminal papillary urinary bladder paraganglioma: case report and review of literatures. J Radiol Sci September 2015 Vol.40 No.3
  • Wong-You-Cheong JJ, et al: Neoplasms of the urinary bladder: radiologic-pathologic correlation. RadioGraphics 2006; 26: 553-580
  • 山下康行、知っておきたい泌尿器のCT・MRI p.174-175
  • 二橋尚志ら、画像診断 vol.36 No.1. 2016; 84-86
  • 杉村和朗ら、症例の比較で学ぶ画像診断 婦人科・泌尿生殖器領域50 選 画像診断 vol.31 No.4 臨時増刊号. 2011; 207-20

 

 

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Moderator: 児山 久美子