多房性胸腺表胞 multi-locular thymic cyst |
画像所見 |
前医 CT | |
前縦隔に軟部濃度腫瘤がみられる。 |
当院初回 CT | |
単純/early/delay 前縦隔の軟部濃度結節は単純CTで一部高吸収を示す。高吸収の部位に一致した造影効果は認めないが、動脈相から平衡相にかけて隔壁様の造影効果が認められる。 |
当院初回 MRI | |
T2WI/In phase/Opposed phase 前縦隔の腫瘤はT2WIで高信号、T1WIで低信号を呈し、嚢胞性病変と考えられる。明らかな脂肪成分は含有しない。T2強調像で低信号やT1強調像で高信号を示す部位があり、粘ちょうな成分を含有すると考えられ、単純CTで高吸収を示した部位と考えられた。 |
DWI b=800/ADC/Dynamic 95s
嚢胞性腫瘤に明らかな拡散制限はなし。CTでの所見と同様に隔壁に造影効果を認め、多房性嚢胞性病変と考えられるが、隔壁以外に造影効果を示す部位は認めず、充実性成分は明らかでなかった。 |
初回CT vs 2年後CT | |
2年後に撮像した造影CTでは、多房性嚢胞性病変は増大した。初回CTど同様に隔壁に一致した濃染が見られたものの、明らかな充実成分は認めなかった。 |
前縦隔嚢胞 鑑別疾患 |
・多房性胸腺嚢胞
・腫瘍に関連した嚢胞
MALTリンパ腫,胸腺腫,セミノーマ,
結節硬化性ホジキンリンパ腫(特に放射線治療後)
など
胸腺全摘術施行 |
術前血液データ | ||
ANA-EIA SSA/RoAb SSB/LoAb 抗CCP抗体 HIV |
61.6 1200.0 1.5 9.1 (-) |
C.I. U/ml以上 U/ml U/ml |
肉眼所見 |
熱い隔壁を伴う多房性嚢胞が見られ、内容物は淡い黄色〜褐色を呈する |
病理所見 |
リンパ濾胞 コレステリン裂/リンパ濾胞/線維組織/正常胸腺組織 |
最終診断
多房性胸腺嚢胞 Multilocular Thymic Cyst
胸腺嚢胞
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・縦隔腫瘍の3-5% 大多数は単房性
・単房性嚢胞
胸腺咽頭管の遺残や迷入性鰓弓上皮から発生する先天性疾患
・多房性嚢胞
炎症反応に起因
悪性腫瘍や自己免疫性疾患の合併
・腫瘍の嚢胞変性が胸腺嚢胞に類似することがある
Kondo K, et al. Multilocular thymic cyst associated with Sjögren's syndrome.Ann Thorac sarg. 2001;72:1367-1369. 2001;72:1367-1369
多房性胸腺嚢胞
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・1991年にSusterらが提唱
胸腺嚢胞の中で発症に炎症が関与し、非腫瘍性で多房性を示すもの
・炎症反応によって遺残胸腺の髄質上皮が嚢胞に変化
・炎症性変化でHassal小体などの髄質上皮由来構造が嚢状に拡張して発生する
・自己免疫性疾患やHIV感染の合併
・ホジキンリンパ腫やセミノーマなどの腫瘍にも合併
腫瘍に随伴する強い炎症が原因といわれる
Suster S, et al. Multilocular thymic cyst: an acquired reactive process. Study of 18 cases. Am J Surg Pathol. 1991; 15:388-398.
画像所見
CT
・嚢胞と充実性成分からなる境界明瞭な腫瘤
・肥厚した嚢胞壁や隔壁、充実性成分が造影される
MRI
・嚢胞内容物の性状で信号強度が異なる
・ステンドグラス様に描出
Choi YW et al. Idiopathic multilocular thymic cyst: CT features with clinical and histopathologic correlation. Am J Roentgenol 2001; 177: 881-5.
病理所見
・嚢胞壁は上皮で被膜される
・嚢胞壁に島状に非腫瘍性胸腺組織がみられる
・嚢胞の内容物に好中球、単球、マクロファージが混在
・リンパ濾胞性過形成を伴うことがある
治療
外科的切除
部分切除/全摘の明確な指針はない
Suster S, et al. Multilocular thymic cyst: an acquired reactive process. Study of 18 cases. Am J Surg Pathol. 1991; 15:388-398.
Take home message |
前縦隔の多房性嚢胞を認めた場合
・多房性胸腺嚢胞
・腫瘍性嚢胞
画像上の鑑別は困難
自己免疫性疾患の有無が鑑別の一助となることも
背景に腫瘍がなくとも経時的増大を見ることがある
参考文献
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