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第 376 回 東京レントゲンカンファレンス[2017年5月25日]
症例3 30歳代 女性 : 掻痒感と疼痛を伴う右背部皮下腫瘤
肺吸虫症
paragonimiasis


 肺吸虫症

・本邦では近年各地で散発的に発生
・東南アジアを中心とする外国人居住者の増加、ジビエ料理ブーム
・本邦での肺吸虫症の年間新規感染者50例近いと推測

<ウェステルマン肺吸虫症 paragonimiasis westermani>
・体長は7〜16mm、体幅4〜8mmの成虫
・感染経路
 ▶第2中間宿主であるモクズガニサワガニの生食
  ・ケジャン(生カニの醤油漬け;韓国料理)、
  ・ソムタムプー(生カニの塩漬けとパパイヤのサラダ;タイ料理)
  ・モクズガニの老酒漬け(中華料理)
 ▶待機宿主であるイノシシ肉の生食、シカ肉

・生活史
  経口的に感染したメタセルカリア(被嚢幼虫)は小腸で脱嚢
 →小腸壁を貫通して腹腔内
 →腹直筋内に侵入・発育
 →再度腹腔内に戻る・・・感染後3週間
 →横隔膜を貫いて胸腔に移行
 →胸膜から肺内に移行・・・感染後3-4週間
 →肺内に線維性組織による虫嚢を形成
 →さらに4-8週間を経て産卵開始


胸部肺吸虫症;喀痰・血痰、咳嗽、胸痛、胸水、気胸、呼吸困難
肺外肺吸虫症;消化器、皮膚、脳、眼窩

画像所見 
▶急性期〜亜急性期;多彩
胸膜肥厚、胸水
すりガラス影を伴う辺縁不明瞭な結節
胸膜から結節に連続する虫道
小葉間隔壁肥厚、気管支壁肥厚
気胸
 
虫体の移動に伴う病変の変化が見られる
腹壁脂肪織の濃度上昇、肝内の虫道

▶慢性期
境界明瞭な不整形腫瘤(虫嚢形成)・・・内部に壊死・空洞・淡い石灰化

 

<宮崎肺吸虫症 paragonimiasis miyazaki>
・体長7〜8mm、体幅約3〜4mmの成虫
・成虫はイタチ、テン、イノシシ、イヌ、ネコなどの肺に寄生
・感染源はサワガニ(淡水産カニ)の生食
・成虫に発育せず、幼虫が肺内外を移動(幼虫移行症
・・・胸膜炎症状が生じやすい;胸痛、胸水、気胸が多い
・喀痰からの虫卵検出5%以下
画像所見;ウェステルマン肺吸虫症とほぼ同様と考えられている

・検査
▶血液検査;白血球分画で好酸球増多、血清IgE上昇
▶画像診断
抗寄生虫抗体検査;血清、胸水、髄液中
▶喀痰、便、気管支肺胞洗浄液からの虫卵の同定←確定診断(23%)
・・・食事歴やこれらを併せ総合的に判断することが多い。

・治療
吸虫駆除薬ブラジカンテル(ビルトリシド®) 3日間内服


 

 


参考文献

  • Kim TS et al. AJR 2005; 185:616-621
  • 村田喜代史ら. 胸部のCT 2011; 第3版:p389-p390
  • Shim SS et al. The British Journal of Radiology 2012; 85:403-410
  • 川畑政治ら. 呼吸 2015; 34:910-916