肝未分化(胎児性)肉腫 undifferentiated embryonal sarcoma |
鑑別診断 |
・HCC
・fibrolamellar carcinoma
・intrahepatic cholangiocarcinoma
・angiosarcoma
・leiomyosarcoma
・epithelioid hemangioendothelioma
・lymphoma
・metastasis
・hepatic adenoma
・mesenchymal hamartoma
肝未分化肉腫(Undifferenciated (embryonal) sarcoma of the liver) |
〈臨床所見〉
・未分化な間葉系細胞からなる悪性腫瘍。6〜10歳に好発するが、成人にも発症する。70歳台の症例報告あり。
・症状:腹痛、腹部腫瘤、腹部不快感など。
・採血:特異的な腫瘍マーカーはない。(AFPは正常範囲内)。
・治療:切除(+化学療法)。
・予後:不良。以前は平均余命12か月とされていたが、最近ではneoajuvant chemotherapyとの併用により改善されてきている。
〈病理所見〉
「肉眼所見」
・辺縁平滑な充実性腫瘤で、出血がしばしば見られる。
・嚢胞成分を伴うことが多い(腫瘍の急速な増大に伴う壊死、嚢胞変性による)。嚢胞変性が高度の場合、隔壁を伴う嚢胞性腫瘤の像を呈する。
「組織病理所見」
・紡錘形または星芒状細胞が見られ、しばしば多核巨細胞が混在する。
・好酸性のPAS陽性の硝子体が細胞内、間質に見られる。
・間質に豊富な粘液腫様成分を伴うのが典型的。
〈画像所見〉
「超音波検査所見」
・充実性腫瘤として認められ、内部は不均一な等〜高エコーを示す。
・嚢胞成分を伴うことが多く、嚢胞変性が強いと隔壁を伴う嚢胞性腫瘤の像を呈する。
「CT所見」
・辺縁平滑な充実性腫瘤。嚢胞を伴うことが多い。
・充実部分(myxoid stromaによる)は主として、非造影CTにて水濃度と同等の低濃度を示す。
・造影にて、早期相でserpiginous vesselsを認める。末梢部の結節状・内部の隔壁様の濃染を認めることがある(後期相で濃染の範囲が拡大)。辺縁に後期相で偽被膜によるrim enhancementを認める。
・しばしば出血を反映した所見がみられる。
・石灰化は稀。
「MRI所見」 《T1WI、T2WI》
・辺縁平滑な腫瘤。嚢胞を伴うことが多い。
・充実部分は主として、脳脊髄液と同等の信号を示す。
・T2WIで充実部分の内部に隔壁様の低信号域を認めることがある。偽被膜を反映し、辺縁部に低信号のrimがみられることがある。
・しばしば出血を示唆する所見(嚢胞内の場合fulid –debris level )が見られる。
「MRI所見」 《造影》
・末梢部の結節状・内部の隔壁様の濃染、内部の不均一な濃染を認める。後期相で充実部分の濃染の範囲が拡大。辺縁に偽被膜によるrim enhancementを認めることがある。
まとめ |
今回提示した症例は、充実成分がT2WIで著明な高信号を示さないという点では、今まで報告されている肝未分化肉腫の典型的な症例とは異なる。
しかし孤立性の、嚢胞成分を伴う辺縁平滑な大きな充実性腫瘍で、嚢胞内にfulid –debris level(嚢胞内出血)が見られるという点で、今まで報告された肝未分化肉腫の症例と一致していると考えられる。
Take home message |
肝臓に孤立性の辺縁平滑な、嚢胞成分や出血を伴う充実性腫瘍を認めた場合には、成人の症例でも、肝未分化肉腫を鑑別診断に含める必要がある。
参考文献