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第 379 回 東京レントゲンカンファレンス[2017年10月26日]
症例8 70歳代 男性 : 右季肋部痛
黄色性肉芽腫性胆嚢炎
xanthogranulomatous cholecystitis


 所見のまとめ
 
CT
・胆嚢壁のびまん性肥厚、周囲脂肪織混濁
・体部に4cm大の腫瘤
内部低吸収、一部脂肪濃度あり
辺縁部主体の増強効果
肝との境界は不明瞭、肝内胆管拡張なし
・胆嚢内に少量のガス
・近接する十二指腸の壁肥厚

十二指腸への穿通

・有意なリンパ節腫大なし

MRI
・T2WI:腫瘤中央部・・・中等度高信号  腫瘤辺縁部・・・軽度高信号
・DWI:拡散制限(+)
・CSI:腫瘤内に脂肪含有(+)
・造影dynamic:腫瘤辺縁部および隔壁様構造に造影増強効果(+)

術前診断
➀ 黄色肉芽腫性胆嚢炎(十二指腸第二部への穿通を伴う)
➁ 胆嚢癌


 黄色肉芽腫性胆嚢炎 xanthogranulomatous cholecystitis(XGC)

・慢性胆嚢炎の稀な亜型。
・胆嚢壁内に胆汁が漏出し、化学性炎症をきたす。
・病理学的には、泡沫組織球主体の肉芽形成が特徴。
・しばしばCA19-9の上昇。
・胆嚢癌との鑑別が問題となる。
・しばしば胆嚢癌を合併(7-14%)。
村松 勝.胆道 2010; 24: 219-226

画像所見
・胆嚢壁肥厚(びまん性 > 局在性)
・肥厚した壁内に、CTで低吸収、MRIでT1/T2延長を呈する結節。結節は増強効果を欠く。→膿瘍黄色肉芽腫を反映。
Shuto R, et al. Eur Radiol 2004; 14: 440-446脂肪の含有(後述)。
・粘膜面は保たれることが多い。
・肝、結腸、十二指腸、腹壁への癒着や瘻孔形成
・胆嚢、胆管内に結石を有することが多い。
Singh VP, et al. World J Radiol 2016; 28: 183-191

XGC:胆嚢癌との鑑別
CTで低吸収、MRIでT1/T2延長を呈する壁内の結節はXGCに特徴的であるが、出現頻度は50%程度。
Shuto R, et al. Eur Radiol 2004; 14: 440-446 ・XGCでは、chemical shift image:CSIで壁内の脂肪が70%以上で検出される。
Singh VP, et al. World J Radiol 2016; 28: 183-191・脂肪を含む胆嚢癌も報告されている(英文報告で数例)。
Nakayama T, et al. Abdom Imaging 2003; 28: 684-687

XGC:CT診断
造影CTにおいて、下記5項目中3項目以上あればXGCを疑う(感度83%、特異度100%)
・びまん性胆嚢壁肥厚 (対称性/非対称性)
・壁内の低吸収結節
・粘膜面の連続性あり
・肝内胆管拡張なし
・リンパ節腫大なし
Goshima S, et al. Eur J Radiol 2010; 74: e79-83  →本症例は上記のうち4項目を満たしていた


 Take Home Message

XGCの診断においては、
脂肪含有(CSIでは検出率70%以上)
CT所見5項目の組み合わせ
によりXGCの正診に迫ることができる。

 

 


参考文献

  • Hatakenaka M, et al: Euro Radiol. 2003; 13: 2233-2235
  • Nakayama T, et al: Abdom Imaging. 2003; 28: 684-687
  • Goshima S, et al: Euro J Radiol. 2010; 74: e79-83
  • Shuto R, et al: Euro Radiol. 2004; 14: 440-446