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第 383 回 東京レントゲンカンファレンス[2018年4月26日]
症例7 30歳代 男性: 健診の腹部エコーで肝に腫瘤を指摘された
エキノコックス症
echinococcosis


 所見まとめ

・肝内〜肝門部に石灰化を伴う嚢胞性腫瘤
・T2WI高信号を示す嚢胞状構造の集簇
・増強効果に乏しい

 

 エキノコックス症

病原体: 条虫科エキノコックス属の幼虫(包虫)
感染経路: キツネ・イヌ(終宿主)などの糞便内にある虫卵をヒトが経口摂取することによる。
・単包条虫(Echinococcus granulosus)
・多包条虫(Echinococcus multilocularis)

日本(北海道)では主に多包条虫が生息する。
(国立感染症研究所 https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/338-echinococcus-intro.html)

・病巣は主に肝に形成する。ほか、肺、脳、骨 など
・潜伏期間は5-20年
肝病変が小さい初期は無症状だが、緩徐に増大し、肝腫大、閉塞性黄疸、肝機能障害などを呈する。
・診断は画像の他に血清抗体、組織診断などによる。(生検は播種のリスクがあり、原則行わない)

特徴
・壁の石灰化を伴う嚢胞
・内部はT2WI等〜高信号
・嚢胞の増強効果なし

治療
・外科的切除
・albendazoleなどの駆虫薬内服
(AJR Am J Roentgenol 176: 1207-12)

 

 Take Home Message

出身地に注意(現住所ではわからない)

 

 


参考文献

  • 棚橋 裕吉ら, 画像診断 Vol.38 No.1 p.16-30
  • Bachler P et al., RadioGraphics 36: 1001-1023
  • Benedikt V. Czermak et al., AJR Am J Roentgenol 176: 1207-12
  • Eckert J et al., WHO/OIE manual on echinococcosis in humans and animals: a public health problem of global concern, 2001
  • 国立感染症研究所web https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/338-echinococcus-intro.html