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東京レントゲンカンファレンス TOP症例一覧 第384回症例症例:呈示
第 384 回 東京レントゲンカンファレンス[2018年5月24日]
症例5 40歳代 女性
十二指腸GIST(消化管間質腫瘍)
gastrointestinal stromal tumor of the duodenum

 

 画像所見

【dynamic CT】
(PL、動脈優位相、門脈優位相、平衡相)
・腫瘤の腹側部分は膵とのbeak signがあるように見えるが、背側部分では膵頭部との連続性は乏しい。
・腫瘤の一部は十二指腸下行脚との境界が不明瞭に見える。

【MRI】
(T2WI、DWI、ADCmap)
・腫瘤の辺縁はT2WIで軽度高信号、DWIで軽度高信号を示す。内部はT2WIで高信号を示し、ADC値は上昇。 嚢胞変性と思われた。

(T1WIf/s 、動脈優位相、門脈優位相、平衡相)
・腫瘤の辺縁は良好な造影増強効果を受ける。 内部には嚢胞変性あり。

【FDG-PET(非提示画像)】
img
腫瘤の充実部分に軽度のFDG集積(SUVmax:E:4.6/D:5.2)あり。


 画像所見のまとめ

・十二指腸と膵頭部の間に位置する、直径38mmの境界が比較的明瞭な腫瘤。
・腫瘤の腹側には膵頭部とのbeak signを認めるが、背側部分では陰性。
・十二指腸との境界が不明瞭に見える部分あり。
・内部には嚢胞変性あり。

 

術前診断:十二指腸下行脚の粘膜下腫瘍
     鑑別に膵頭部の神経内分泌腫瘍
術式:膵頭十二指腸切除
手術所見:膵頭部と十二指腸との間に位置する、大きさ39*26mmの腫瘤を確認した。

摘出標本:マクロ割面像
img
腫瘤は淡褐色調、充実性で中心に狭い空隙形成を伴う。
腫瘤の辺縁に沿う十二指腸下行脚の固有筋層を確認。
→十二指腸壁由来の腫瘤
     
HE染色   免疫(CD117)染色
img   img
紡錘形の腫瘍細胞が束状、渦巻き状に配列・増生。
間質には軽度の出血や中心部に狭い空隙形成あり。壊死巣なし。
  腫瘍細胞はCD117(KIT)びまん性陽性。
CD34陰性、平滑筋アクチン陰性、S-100陰性。 Ki-67標識率:2%以下。

病理診断:十二指腸の嚢胞変性を伴うGastrointestinal stromal tumor(GIST)

 

 嚢胞変性を伴ったGIST(文献1,2,3,4)

・消化管の粘膜下に発生する、比較的稀な間葉系腫瘍。
・特徴的な症状や所見はなく、本邦ではスクリーニング検査で無症状のまま発見されることが多い。
・発生頻度は年間100万人あたり10〜20人で、消化管間葉系腫瘍の中での発生頻度は最も高い。
・発生部位は胃が60〜70%、十二指腸・小腸が20〜30%、大腸、食道と続き、腸間膜にも発生する。
・鑑別となる疾患は平滑筋種、神経鞘腫。
・カハール介在細胞もしくはその前駆細胞が起源と考えられ、その発生にはc-kit遺伝子や血小板由来増殖因子受容体α
  (platelet-derived growth factor receptorα: PDGFRA)遺伝子の機能獲得性変異が関与するとされている。
・病理組織学的には、紡錘形ないし類上皮型の腫瘍細胞の増殖から成り、免疫染色でKIT(95%以上)
 あるいはCD34(70〜80%)陽性を示す。
・一般的に、小さいものは内部均一であるが、大きくなるにつれ壊死や出血を伴うことが多く、ときに石灰化を認める。
・嚢胞変性の機序は腫瘍の急激な増大に伴う腫瘍内阻血、壊死、腫瘍変性によるものとされる。
・腫瘍内出血や壊死によるものは悪性の可能性も示唆される。
・嚢胞変性を伴うGISTは腫瘍径が10cmを超えて発見される場合が多く、リスク分類ではhigh risk群に分類されやすい。
・悪性度を予測するCT所見は、腫瘍長径が11cm以上、境界不明瞭、表面凹凸、不均一な増強効果(内部出血・壊死・嚢胞変性)、
 腸間膜や消化管壁への浸潤(50%以上の浸潤あるいは壁の層構造の不明瞭化)、肝転移とされている。
・MRIは嚢胞変性や出血の検出に関してはCTよりも鋭敏である。
・またDWIではGISTの生物学的悪性度を反映し高信号を示すことが多く、ADC値がGISTの診断および悪性度評価に有用という
 報告もある。

健康診断の腹部超音波検査を契機に発見された、嚢胞変性を伴う十二指腸原発GISTを経験した。


 


参考文献

  1. 鶴丸大介ら:CT/MRIによるGISTの画像診断 日独医報 60: 79-88, 2015
  2. 井上明星ら:健診腹部超音波検査を契機に発見され膵嚢胞性腫瘍と鑑別を要した胃原発GISTの1例 日本消化器がん検診雑誌 51: 363-368, 2013
  3. 星野真人ら:嚢胞変性を示し診断が困難であった胃GISTの1例 日本外科系連合学会誌 34: 46-50, 2009
  4. 奥川喜永ら:嚢胞変性を伴った巨大空腸GISTの1例 日本臨床外科学会雑誌 68: 1985-1989, 2007
  5. Mizuki N, et al : Primary retroperitoneal neoplasms: CT and MR imaging findings with anatomic and pathologic diagnostic clues Radiographics 23: 45-57, 2003

 

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Moderator: 比氣 貞治