十二指腸GIST(消化管間質腫瘍) gastrointestinal stromal tumor of the duodenum |
画像所見 |
【dynamic CT】
(PL、動脈優位相、門脈優位相、平衡相)
・腫瘤の腹側部分は膵とのbeak signがあるように見えるが、背側部分では膵頭部との連続性は乏しい。
・腫瘤の一部は十二指腸下行脚との境界が不明瞭に見える。
【MRI】
(T2WI、DWI、ADCmap)
・腫瘤の辺縁はT2WIで軽度高信号、DWIで軽度高信号を示す。内部はT2WIで高信号を示し、ADC値は上昇。
嚢胞変性と思われた。
(T1WIf/s 、動脈優位相、門脈優位相、平衡相)
・腫瘤の辺縁は良好な造影増強効果を受ける。
内部には嚢胞変性あり。
【FDG-PET(非提示画像)】 |
腫瘤の充実部分に軽度のFDG集積(SUVmax:E:4.6/D:5.2)あり。 |
画像所見のまとめ |
術前診断:十二指腸下行脚の粘膜下腫瘍
鑑別に膵頭部の神経内分泌腫瘍
術式:膵頭十二指腸切除
手術所見:膵頭部と十二指腸との間に位置する、大きさ39*26mmの腫瘤を確認した。
摘出標本:マクロ割面像 |
腫瘤は淡褐色調、充実性で中心に狭い空隙形成を伴う。
腫瘤の辺縁に沿う十二指腸下行脚の固有筋層を確認。 →十二指腸壁由来の腫瘤 |
HE染色 | 免疫(CD117)染色 | |
紡錘形の腫瘍細胞が束状、渦巻き状に配列・増生。 間質には軽度の出血や中心部に狭い空隙形成あり。壊死巣なし。 |
腫瘍細胞はCD117(KIT)びまん性陽性。
CD34陰性、平滑筋アクチン陰性、S-100陰性。 Ki-67標識率:2%以下。 |
病理診断:十二指腸の嚢胞変性を伴うGastrointestinal stromal tumor(GIST)
嚢胞変性を伴ったGIST(文献1,2,3,4) |
・消化管の粘膜下に発生する、比較的稀な間葉系腫瘍。
・特徴的な症状や所見はなく、本邦ではスクリーニング検査で無症状のまま発見されることが多い。
・発生頻度は年間100万人あたり10〜20人で、消化管間葉系腫瘍の中での発生頻度は最も高い。
・発生部位は胃が60〜70%、十二指腸・小腸が20〜30%、大腸、食道と続き、腸間膜にも発生する。
・鑑別となる疾患は平滑筋種、神経鞘腫。
・カハール介在細胞もしくはその前駆細胞が起源と考えられ、その発生にはc-kit遺伝子や血小板由来増殖因子受容体α
(platelet-derived growth factor receptorα: PDGFRA)遺伝子の機能獲得性変異が関与するとされている。
・病理組織学的には、紡錘形ないし類上皮型の腫瘍細胞の増殖から成り、免疫染色でKIT(95%以上)
あるいはCD34(70〜80%)陽性を示す。
・一般的に、小さいものは内部均一であるが、大きくなるにつれ壊死や出血を伴うことが多く、ときに石灰化を認める。
・嚢胞変性の機序は腫瘍の急激な増大に伴う腫瘍内阻血、壊死、腫瘍変性によるものとされる。
・腫瘍内出血や壊死によるものは悪性の可能性も示唆される。
・嚢胞変性を伴うGISTは腫瘍径が10cmを超えて発見される場合が多く、リスク分類ではhigh risk群に分類されやすい。
・悪性度を予測するCT所見は、腫瘍長径が11cm以上、境界不明瞭、表面凹凸、不均一な増強効果(内部出血・壊死・嚢胞変性)、
腸間膜や消化管壁への浸潤(50%以上の浸潤あるいは壁の層構造の不明瞭化)、肝転移とされている。
・MRIは嚢胞変性や出血の検出に関してはCTよりも鋭敏である。
・またDWIではGISTの生物学的悪性度を反映し高信号を示すことが多く、ADC値がGISTの診断および悪性度評価に有用という
報告もある。
健康診断の腹部超音波検査を契機に発見された、嚢胞変性を伴う十二指腸原発GISTを経験した。
参考文献
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