腸管嚢胞性気腫症 pneumatosis cystoides intestinalis |
画像のまとめ |
CT
・上行結腸に腸重責を認めていたが、明らかな腫瘤性病変なし
・腸管壁には嚢胞状のair densityが多発
腸管嚢胞様気腫症 |
・腸管嚢胞様気腫症は腸管壁内に多数の気腫性嚢胞を形成する比較的稀な 疾患。
1730年にDu Vernoiが剖検例を報告しているのが最初であり、その後Meyerにより命名された。
Du Vernoi GJ. Obsergationae Anatomicae Acid Scient Imp Petoropol 1730 ; 5 :213-5
Heng Y, Schuffler MD, Haggit RC et al. AMJ Gastroentrol 1995 ; 90 : 1747-58・臨床症状には腹部膨満、腹痛、血便、下痢などが報告されているが、一般的には軽微。
単純X線やCTにより偶然発見されることの方が多い。
・2000年以降の報告では性差はあまり無し。
日本消化器外科学会雑誌.2012;45(7):778-784
PCIと疫学
・最近では40歳代以降に多く、特に60歳以上の罹患率が非常に高い
日本消化器外科学会雑誌.2012;45(7):778-784
河田 義夫,田辺 憲一.腸管嚢腫様気腫症2 例とその統計的観察.外科の領域.1957;5:209–12・好発部位は小腸が多いという報告がある一方大腸の割合が多いという報告もあり、はっきりはしない
日本消化器外科学会雑誌.2012;45(7):778-784・大腸病変は右半結腸の方が左半結腸よりも多い
日本消化器外科学会雑誌.2012;45(7):778-784
PCIの原因1
・特発性PCI の割合が約15%程度であったとされているように,続発性PCI がほとんど
Koss LG. Abdominal gas cysts (pneumatosis cystoides intestinorum hominis); an analysis with a report
of a case and a criticareview of the literature. AMA Arch Pathol. 1952;53:523–49.
特発性 | 続発性 |
潰瘍や幽門狭窄、腸閉塞や潰瘍性大腸炎などの消化管疾患 | |
消化管吻合 | |
慢性閉塞性肺疾患・喘息 | |
膠原病 | |
血液疾患 |
PCIの原因2
機械説(内圧説) | 腸管内圧が上昇し,腸管ガスが粘膜の微細な損傷部から腸管壁内へ侵入して発生する |
細菌説 | クロストリジウム属などのガス産生菌が粘膜下へ侵入し,腸管壁内でガスを産生する |
化学有機溶剤説 | トリクロロエチレンの慢性曝露によって発症する |
肺原説 | 閉塞性肺疾患や慢性肺疾患,咳嗽などによる胸腔内圧上昇により肺胞が損傷し,ガスが縦隔を経由して後腹膜・腸間膜・腸管壁に達する |
ステロイドホルモン説 | 粘膜下リンパ組織の減少による粘膜の損傷,結合組織に直接作用し粘膜抵抗性を減弱させ,粘膜修復過程を妨害,肺組織の脆弱化による縦隔気腫の発症など> |
PCIと腸重積
腸重積を併発したPCIの特徴は、一般的なPCI と比較し特発性で、若年発症、男性に多く、右側結腸に発症する
・PCI による腸重積と確実に診断されれば、まずは非観血的に整復を図り、続けて酸素療法を施行することが標準治療
⇒術前に器質的病変がPCI と確定診断できなければ、手術も考慮
・若年者の腸重積の原因としては、悪性リンパ腫やPeutz-Jeghers 型ポリープ、リンパ管腫や細菌性腸炎の他に、PCIの報告もあった。
日本消化器外科学会雑誌.2012;45(7):778-784
Take home message |
・若年者の腸重積の原因の1つにPCIが挙げられ、CTで診断可能である。
・PCIの治療は保存療法が基本であるが、腸重責を繰り返す場合は手術も考慮される。
参考文献