casetop
東京レントゲンカンファレンス TOP症例一覧 第386回症例 ≫ 症例:診断

第 386 回 東京レントゲンカンファレンス[2018年9月27日]

症例8 50歳代 男性:腹部超音波検査にて腹腔内に腫瘤性病変を指摘され、精査目的受診。
慢性拡張性血腫
chronic expanding hematoma


 鑑別診断

・GIST
・肉腫
・悪性黒色腫の転移:T1強調像で等〜低信号
・慢性拡張性血腫:手術や外傷歴が無い

⇒経直腸生検施行するも、診断に至らず、腫瘤切除の方針となった

 

 慢性拡張性血腫

・1980年にReidらにより定義。
・慢性硬膜下血腫と同じ機序で緩徐に増大
・原因:外傷、手術、不明       
・病理学的には特異的所見に乏しい
  中心部に陳旧性の血腫、辺縁には小血管に富む新鮮血腫、最外層に被膜を有する
・治療:被膜を含めた外科的切除
Reid JD et al.JAMA 1980;244:2441-2442
CT:辺縁より漸増性の造影効果、石灰化
MRI:被膜を有し、低信号と高信号のモザイク状を呈する
      新鮮血腫:辺縁部 T2WI/DWI高信号 造影効果+
      陳旧性血腫:中心部 T2WI/DWI低信号 造影効果 -

 

 悪性黒色腫の腸管転移

・転移性悪性黒色腫の4-8%
・消化管転移の75%は小腸への転移
画像所見
・多血性の上皮下結節、腸重積(10-20%)
・FDG-PETが転移巣の検出に有用
   - FDGの取り込みが活発 1cm未満でも検出可
栃木 透ら.日臨外会誌2013;74:1312-1316
Wolfgang F.Dahnert.Radiology review manual 3rd ed 2016;p1118p

 

 結語

・悪性黒色腫の既往があり、外傷歴や腹部手術歴が無く、術前診断に苦慮した慢性拡張性血腫を経験した
・MRIで被膜を有し、モザイク状の不均一な信号、辺縁の造影効果があれば、慢性拡張性血腫を鑑別に挙げる

 

 


参考文献

  • Reid JD et al.JAMA 1980;244:2441-2442
  • Sakurai J et al. Magn Reson Med Sci 2010;9:81-84
  • G.L.Hwang et al.AJR 2003;180:1182-1183
  • 砂原政男ら.日臨外会誌 2014;75:525-531
  • 栃木 透ら.日臨外会誌2013;74:1312-1316
  • 林 真路ら.日臨外会誌2009;70:1536-1540