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東京レントゲンカンファレンス TOP症例一覧 第386回症例 症例:呈示
第 386 回 東京レントゲンカンファレンス[2018年9月27日]
症例1 40歳代 女性
橋外髄鞘崩壊症、 腎性尿崩症に併う 高ナトリウム血症
exrapontine myelinolysis, hypernatremia caused by renal diabetes insipidus

 

 病変の分布

内包 外包 淡蒼球 視床 脳梁 海馬 中小脳脚 小脳 大脳脚 橋線維
 →広範な白質線維脱落が疑われる。

何らかの代謝異常を念頭に置く。(淡蒼球もあり、当時はCO中毒や低酸素脳症も疑った)

ヒントの Body CT
img

入院時の Na  200mmol/L と非常に高値を示した。
3 ヶ月後、真菌感染症により永眠。
剖検が施行された。

浸透圧性脱髄症:Pontine and extrapontine myelinolysis


 浸透圧性脱髄症 Osmotic myelinolysis

アルコールや低栄養・糖尿病・肝硬変・神経性食欲不振・電解質異常・ナトリウム急速補正で生じる

・50%は橋中心性融解症 橋外半数
・皮質下白質・被殻・尾状核・視床・中脳
・内包・外包・脳梁>海馬・皮質>外側膝状体
・橋中心などの対称T1LowT2High 病変を示す。
橋錐体路や縦走線維は比較的保たれる
・三角形状や蝙蝠状と称される形状。
・視床では外側に多い
・皮質では層状壊死も
・急性はADC低下あり、辺縁が増強される。
・両側中小脳脚病変を示す疾患の1つ。
・皮質下白質の先端部が侵され、小嚢胞状になる。

img 腎辺縁に小嚢胞が多発している。
双極性障害の既往からは、リチウムによる腎障害が想起される。

炭酸リチウム→腎性尿崩症→高 Na 血症→浸透圧性脱髄症 という流れ

 

 リチウム腎症 Lithium nephropathy

・躁病の治療薬、慢性にリチウムを使用。
・腎性尿崩症を発症する。
・腎内に1-2mmの無数の嚢胞ができる。
・大きさは均一。両側対称。

・橋外髄鞘崩壊症は意外に多くの部位に異常を示す。
・基底核や中小脳脚の他にも海馬、小脳もある。
・精神科疾患が背景にある患者は電解質異常が頻出!(これ以外にも水中毒がある)
・高 Na 血症では外包病変が多い?(Wilson 病の分布に似ていなくもない)
・特に躁鬱病ではリチウムの副作用に注意が必要である。

 


参考文献

  • Hypernatremia from a hunger strike as a cause of osmotic myelinolysis Annette H.M et al. Neurology 64:574-5 2005
  • Seasonal postpartum hypernatremic encephalopathy with osmotic extrapontine myelinolysis and rhabdomyolysis. Naik KR et al. J Neurol Sci. 291:5-11 2010
  • Osmotic demyelination syndrome in the setting of hypernatremia Neeraj Jain et al. Neurology India 66:559-560 2018
  • Newly described additional sites of extrapontine myelinolysis along with typical pontine and extrapontine myelinolysis. Kamble JH et al. Neurology India 65:181-2 2017

   
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Moderator: 住田 薫