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東京レントゲンカンファレンス TOP症例一覧 第387回症例 症例:呈示
第 387 回 東京レントゲンカンファレンス[2018年10月25日]
症例6 40歳代 男性
POEMS 症候群
POEMS syndrome
     
【現病歴】
・右手脱力と巧緻運動障害
・脳梗塞
・両側の足先から痺れ
・大腿部痛と腰痛
【身体所見】
・浮腫
・四肢の末梢神経障害
【血液検査】
・多血症
・IgG高値
・甲状腺機能低下症
・腫瘍マーカー上昇なし
     
 画像所見

【CT 】
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・多発骨硬化像
・心嚢水
・胸水
 
【頭部MRI:拡散強調像/FLAIR/MRA】
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・新鮮梗塞
・硬膜肥厚
・多発脳動脈狭窄

その他の画像所見・・・
腹水、多発リンパ節腫大、皮下浮腫
肺気腫(これは喫煙が原因だろう)
いずれも非特異的所見
前立腺MRIは異常なし

 

入院後の経過
・血清免疫電気泳動検査:IgGモノクローナル様変化 →M蛋白血症
・骨髄生検:形質細胞の増加
・両下腿の色素沈着が出現


 POEMS症候群

P:Polyneuropathy (多発神経炎)
O:Organomegaly  (臓器腫大)
E:Endocrinopathy (内分泌異常)
M:M protein   (M蛋白血症)
S:Skin changes  (皮膚異常)

・形質細胞の単クローン増殖
・血管内皮増殖因子(VEGF)が増加 → 本例でも高値

VEGFには強力な血管透過性亢進、血管新生作用あり
・浮腫、心嚢液、胸腹水
・皮膚の色素沈着、血管腫
・末梢神経障害 → 血管神経関門が破綻、毒性物質が神経におよぶ可能性

 

➀骨病変    
98%で 骨病変あり 硬化 97%
融解   2%
混合   1%
→ VEGFが骨芽細胞前駆細胞の分化を促進か

甲状軟骨の硬化像に関して─
軟骨組織への転移は非常に稀(血流やリンパ流が無い)
軟骨骨化が起こる→髄腔が形成、血流出現→血行性転移

➁頭蓋内病変
脳梗塞の発症率:13%/5年 と高い
VEGFが血管平滑筋細胞と髄膜皮細胞に強く発現 → 血管狭窄硬膜肥厚 過粘調症候群も関連?

治療
・標準的治療法は未確立
・多発性骨髄腫に準じた治療
・自己末梢血幹細胞移植やサリドマイド療法も行われる

本例: BD療法(ボルテゾミブ+デキサメタゾン)が8サイクル終了、経過は良好

 

 Take Home Messege

原因不明の多発骨硬化像をみた場合には POEMS症候群も鑑別に挙げる

 

 


参考文献

  • Shibuya K. Detection of Bone lesions by CT in POEMS Syndrome. Intern Med 50: 1393-1396, 2011.
  • Fang-Wang Fu. Ischemic stroke in patients with POEMS syndrome: a case report and comprehensive analysis of literature. Oncotarget. 2017 Oct 24; 8(51): 89406−89424.
  • S A. Dupont. Cerebral infarction in POEMS syndrome. Neurology. 2009 Oct 20; 73(16): 1308−1312.
  • 桑原 聡. Crow-Fukase 症候群の病態と新規治療.日本内科学会雑誌 第100 巻 第8 号・平成23 年8 月10 日

 

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Moderator: 原 佑樹