キャッスルマン病(腹壁) Castleman's disease |
画像所見 |
【腹部単純CT】 ・骨盤レベル、前腹壁の右側寄りの腹直筋鞘下に位置する、境界明瞭で内部均一な腫瘤性病変あり。 ・CT値は筋と同程度。 |
【MRI】
・前腹壁の腫瘤性病変はT1WIにて均一な低信号、T2WIにて淡い信号上昇を示す。
・辺縁は比較的整で腫瘤の周囲には脂肪組織が見られる。
・Gd-fs-T1WIで均一な強い造影効果あり。
・DWI(b=800)、ADCでは著明な拡散制限が見られる。
・ADC値は0.839mm2/secと著明に低下。
【FDG-PET/CT】
・腹壁の腫瘤に一致するようにFDG中等度集積を認める。(SUVmax 2.64)
・その他の領域に明らかな集積は見られず。
画像所見まとめ
単純CT:右腹直筋鞘下に50mm×40mm×20mmの境界明瞭な腫瘤性病変を認める。
T1WI:低信号を示し、筋と同等
T2WI:内部均一な淡い信号上昇
DWI,ADC:著明な拡散制限あり(ADC値 0.839mm2/sec)
Gd造影脂肪抑制T1WI:びまん性造影増強効果を示す
PET-CT:腫瘤はFDG集積を伴いSUVmaxは2.64
鑑別診断〜発生部位〜 |
・脂肪腫(軟骨様脂肪腫)、脂肪肉腫:T1WI/T2WIで高信号、脂肪抑制で低信号。
・線維腫症(デスモイドも一種):T2WIで高信号と低信号の混在あり。
・平滑筋腫:筋と比較しT1WIで等〜低信号、T2WI比較的均一な高信号。
辺縁にT2WI低信号の被膜様構造、周囲に拡張した血管構造あり。強い造影効果。
・神経鞘腫:典型的な画像所見に乏しい。病理生検診断になることが多い。
・Castleman病:T1WIで低信号を示し筋と同等、T2WIで淡い低信号で筋に比し信号上昇を認める。
・悪性リンパ腫:典型的な画像所見に乏しい。FDGの取り込みが高い。
病理結果
Castleman Disease(CD), highly suspected.
Castleman病(Castleman Disease:CD):原因不明のリンパ増殖性疾患 |
概要:病変が一つの領域に限局する単中心性(UCD)と、複数の領域に広がる多中心性(MCD)に分けられ、後者のうちHHV8感染が見られない原因不明のものが特発性多中心性として区別される。
疫学:日本での有病者数1500人程度(年間発症頻度は100万人あたり1人程度)
UCD 40歳代 M/F=1/4
MCD 40-60歳代 M/F=2/1
症状:リンパ節腫脹、肝脾腫、発熱、盗汗、貧血など多彩な症状を呈す。
Castleman病診断基準案
A 以下の2項目を満たす。
1腫大した(長径1cm以上の)リンパ節を認める。
2リンパ節または臓器の病理組織所見が、下記のいずれかのキャッスルマン病の組織像に合致する。
1)硝子血管型
2)形質細胞型
3)硝子血管型と形質細胞型の混合型
B リンパ節腫大の原因として、以下の疾患が除外できる。
1悪性腫瘍
血管免疫芽球性T細胞性リンパ腫、ホジキンリンパ腫、濾胞樹状細胞肉腫、腎がん、悪性中皮腫、肺がん、子宮頸がんなど。
2感染症
非結核性抗酸菌症、ねこひっかき病、リケッチア感染症、トキソプラズマ感染症、真菌性リンパ節炎、
伝染性単核球症、慢性活動性EBウイルス感染症、急性HIV感染症など。
3自己免疫疾患
SLE、関節リウマチ、シェーグレン症候群など。
4その他の類似した症候を呈する疾患
IgG4関連疾患、組織球性壊死性リンパ節炎、サルコイドーシス、特発性門脈圧亢進症
病型分類
診断には病理診断が必須であり、原則としてリンパ節の病理診断を行い病型分類がなされている。
〈硝子血管型(HE染色)〉
・胚中心は萎縮性
・マントル層は肥厚
・胚中心には壁の硝子化伴う血管を認める
〈形質細胞型(HE染色)〉
・胚中心は正〜過形成
・濾胞間には形質細胞浸潤
・血管増生
臨床血液 58(2017):2
キャッスルマン病の診療ガイド
病理結果
Castleman Disease(CD),highly suspected.
・マントル層の拡大および胚中心の萎縮あり
・形質細胞は濾胞構造の周辺に集簇
・HHV8(ー)
→単中心性(限局性)CD
病理は混合型
単純CT
辺縁は比較的平滑、筋組織と同等の吸収値を認める。
中心部に点状の石灰化(5-10%)を認めることもある。
造影CT
硝子血管型:内部が大動脈と同等レベルに増強、早期濃染を来すことが一般的である。
形質細胞型:僅かに吸収値の上昇を示す傾向にある。
Eur J Radiol. 2012 Jan;81(1):123-31. doi: 10.1016/j.ejrad.2010.06.018. Epub 2010 Jul 18.
MRI
・T1WI:筋よりは信号上昇を示すも比較的低信号を示す
・T2WI:著明な高信号
・造影T1WI:早期濃染しwashoutされる
・DWI、ADC:著明な拡散低下
・腫瘤周囲および内部に栄養血管のflow viodが散見されることもある
FDG-PET/CT
一般にCDの病変部において18F-FDGの取り込みは中等度増加する。
CDの平均SUVmax:5.8±4.1
UCDは3.3±1.1, MCD:7.0±4.6(P = 0.048)
Clin Nucl Med. 2013 May;38(5):339-42. doi:10.1097/RLU.0b013e3182816730
治療法
・UCD
外科的切除
再発や全身症状悪化の場合はMCDに準じた治療を。
・特発性MCD
症状出現時にはPrednisolone投与。重篤な場合はTocilizumabやSiltuximabの投与が行われる(IL-6阻害薬)。
・HHV-8関連MCD
HIVに対する治療が主。
予後
適切な治療を行えば慢性の経過を辿り、生命予後は比較的良好である。臓器障害を呈した場合は生命予後悪化の傾向。
臨床経過
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腹壁腫瘤を完全摘出したのち、臨床症状も認めず、採血および画像評価にて経過観察としている。
Take home message |
・腹壁の軟部腫瘍で、よく造影され、T2強調像でそれほど高信号ではないが、
ADC低下が強い場合には、Castleman 病も鑑別診断にあげる。
参考文献
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