膝窩動脈外膜嚢腫 adventitial cystic disease of the popliteal artery |
画像所見 |
▼ 下肢CT |
・左膝窩動脈腹側に径24oの境界明瞭な腫瘤性病変 ・造影増強効果なし ・腫瘤に圧排されるように動脈は狭窄 |
▼ 下肢Echo |
・膝窩動脈部に無エコー腫瘤(側方エコー/後方エコーの増強) ・腫瘤内に血流エコー無し |
▼ 下肢MRI |
鑑別診断 |
1.膝窩動脈外膜嚢腫
2.膝窩動脈捕捉症候群
3.Baker嚢胞
4.膝窩動脈瘤
5.閉塞性動脈硬化症
鑑別点
・MRIで確認される嚢胞様の信号や多房性の形状
・CTAやMRAでの動脈の拡張なし(動脈瘤)
・画像上は嚢胞構造と膝関節の交通は指摘できない(Baker嚢胞)
・筋肉と血管の解剖学的変異はなし(膝窩動脈捕捉症候群)
・動脈の狭窄は局所的/血管リスクなし(閉塞性動脈硬化症)
画像ガイド下治療 |
X年07月 Echoガイド下穿刺
→18G PTC針にて穿刺
→内容物吸引できず…
手術 |
・症状緩和ないため手術を施行
・血管を切開したところ”透明ゼリー状の液体が流出” →外膜嚢腫の診断
・血管内部は血栓化しており嚢腫の除去のみでは血流改善なし →血栓除去・吸引にて改善
最終診断:膝窩動脈外膜嚢腫 Adventitial Cystic Disease of the Popliteal Artery
膝窩動脈外膜嚢腫 |
・動脈壁外膜下に生じたゼリー状の液体を内包する嚢胞
歴史
・1947年にAtkins, Keyにより初めての報告(膝窩動脈に関しては1954年 Ejrup, Hiertonnが初)
Atkins HJ, et al. Br J Surg. 1947; 34: 426.
Ejrup B, et al. Acta Chir Scand. 1954; 108: 217-230.疫学
・間欠性跛行を呈する患者の1,200例に1人ほど
Lewis GJT, et al. Br Med J. 1967; 3: 411-415.・若年〜中年男性(男:女=15:1)
・心血管リスクを有さない症例が多い
・典型的には片側(両側はextremely rare)
Franca M, et al. Radiology. 2010; 255: 655-660.
原因
・成因に関しては確立されていない(4つの有力な仮設)
1.全身性粘膜変性説
2.反復外傷説
3.滑膜組織の動脈壁内迷入説
4.胎生期形成異常説
Levien LJ, et al. J Vasc Surg. 1998; 28:193-205.
[画像所見]
超音波
・嚢胞性病変(無〜低エコー)
・嚢胞性病変による動脈の狭窄/閉塞
MRI
・T1強調画像:内容物によって様々な信号
・T2強調画像:高信号
・MRA:血管の狭窄
血管造影
・動脈の狭窄/閉塞を描出
・全周性:砂時計様(hourglass)
・偏心性:三日月刀様(scimitar)
治療
・外科的切除(外膜および嚢胞の切除) →血管の閉塞があった場合はbypass術も検討
・経皮的吸引術 →粘度が高く吸引できないことが多い/再発の報告も
Franca M, et al. Radiology. 2010; 255: 655-660.・血管内にstent留置した報告あるも早期にstent閉塞 →外科的加療が望ましい
Rai S, et al. Ann Vasc Surg. 2009; 23: 410.e1-410.e5.
参考文献
|