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第 394 回 東京レントゲンカンファレンス[2019年9月26日]

症例2 60歳代 女性:脾腫瘤精査
脾臓乾酪性肉芽腫
Caseous granuloma in the spleen

 

 Differential diagnosis

[脾嚢胞状病変]
True cyst /abscess( pyogenic,echinococcal, fungal) / Infarction, peliosis / hematoma, false cyst / Hemangioma, lymphangioma, lymphoma, metastasis

[脾充実性病変]

血管腫
 CT 低-等吸収 石灰化
 MR T1WI 低-等 T2WI 高
 遷延性に全体が濃染
過誤腫
 CT 脾臓と等-やや低 石灰化
 MR T1WI 脾と等 T2WI不均一・軽度高
 早期で全体不均一濃染,後期で脾と等
SANT
 CT 脾よりやや低
 MR T1WI低-等信号 T2WI低(線維)
 中心車軸状低信号

[脾充実性病変(cont.) ]

血管肉腫
 CT 不均一低/高吸収
 MR T1/T2WI不均一な高
 境界不明瞭、辺縁優位強く造影or全体に弱く造影
悪性リンパ腫
 CT 境界不明低吸収腫瘤
 MR 脾と等・低 or T2WIで低 ADC低
 脾より造影効果低,大きな腫瘤は不均一
 脾腫or単発/多発性腫瘤orびまん性
転移
 CT 多発・境界不明瞭な低 石灰化(粘液産生性)
 MR T1/T2WI 脾と等-高信号
 脾よりやや弱く造影
サルコイドーシス
 CT 脾腫or境界不明瞭な低・多発結節
 MR T2WI低
 弱く漸増性の造影効果(肉芽腫線維成分)
膿瘍
 結核/真菌症:1cm以下の多発微小膿瘍
 中心造影不良,リング状濃染
炎症性偽腫瘍
 炎症の程度,時期の違い
 →内部壊死・線維化・肉芽性変化等の構成成分が多彩
画像所見は一定しない  一般に分葉状、遷延濃染、不均一 T1/T2WI低信号(線維化)

 


 脾臓乾酪性肉芽腫

肉芽腫
貧食作用をもつ組織球系細胞は、炎症の場において感染時の病原体や不溶性異物の認識・除去を担い、
これらを取り囲んで結節状に集積 → 組織学的に特徴のある慢性炎症組織を形成する

病理組織学的分類
─異物型(foreign body) 免疫原性に乏しい不溶性異物
─化膿型(suppurative) 真菌などの感染性異物
─サルコイド型(sarcoidal) 類上皮細胞肉芽腫で炎症細胞浸潤乏しい
─類結核型(tuberculoid) 類上皮細胞肉芽腫で周囲に炎症細胞浸潤
─柵状(palisaded) 変性した線維成分の周囲に類上皮細胞
─間質型(interstitial) 結節作らず膠原線維間を縫うように組織球が浸潤

臨床像は肉芽腫の型や局在により多種多様


 Conclusion

・肉芽腫は腫瘤形成性の慢性炎症性病変である →時に画像上腫瘍性病変との鑑別が問題となる
・どのようなターゲットに対しどのような反応を返すかにより、同じ肉芽腫性疾患でも病変は多彩
 →局所の性状と全身像,どちらに注目すべきかは疾患による
・しかし腫瘤を見たときに腫瘍性病変・炎症性病変いずれも説明が付かなければ、
 腫瘤形成性の肉芽腫性疾患を示唆する所見が無いかも考慮したい

 


参考文献

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