第 394 回 東京レントゲンカンファレンス[2019年9月26日]
症例5 40歳代 女性:発熱、右腰背部痛 |
浸潤性尿路上皮癌(腎杯憩室由来) Invasive urothelial cancer originating in the caliceal diverticula |
腎杯憩室 |
定義:腎実質内に発生する嚢胞状空洞のうち、腎盂に隣接 し小腎杯と細い通路で交通しているもの。内面は尿路上皮で覆われ、大きさは直径0.5-7cm。
頻度:成人の0.21-0.6%。先天性・後天性どちらもあり。
大部分は片側性。発生部位に左右差はないが上腎杯の頻度が多い。
尿の通過障害により、結石合併が多い(36-68%)。そのうち80%が小結石の多発・集簇と報告される。多くは無症状だが、尿路感染症の頻度が高まる。
仁平寛巳, 泌尿器科紀要12巻1号, 1966 , p11-25.
山下康行, 知っておきたい泌尿器のCT・MRI 改訂第2版 p 310-312.
腎杯憩室由来の浸潤性尿路上皮癌 |
・腎杯憩室内に充満する小結石の慢性的な刺激により壁内に腫瘍が発生する。
・腎杯憩室は括約筋層の欠損している箇所に生じると推測されており、同部位に腫瘍が発生すると、早期から浸潤性に発育すると考えられている。
・腎盂・腎杯由来を示唆する小結石の集簇像が腫瘍内部に偏在して見られる。
Taito N, et al. Oncol Lett Vol.10, 2015, p2439-2441.
Take home messages |
・結石が集簇する腎杯憩室内から浸潤性尿路上皮癌が発生することがある。
・腎杯憩室周囲の腫瘤性病変の存在に注意して読影する。
参考文献