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第 394 回 東京レントゲンカンファレンス[2019年9月26日]

症例6 学童期 男児:献腎移植後4日目に傾眠傾向あり
(PCA狭窄を伴う)もやもや病による脳梗塞
moyamoya disease

 

 もやもや病

概念:
原因不明の内頚動脈末端、前大脳動脈、中大脳動脈近位部などに閉塞が及ぶ疾患。

疫学:
好発年齢は10歳以下と、30歳台にピーク
本邦およびアジア系民族に多い。
女性にやや多い。
後大脳動脈に病変が合併する頻度 25〜60%

臨床所見:
発症は、小児例では脳梗塞や一過性虚血性変化、成人例では出血が多い。
虚血症状としては、過呼吸や息こらえ時の一過性虚血性変化など。
出血は、脳実質内出血の他に、くも膜下出血、脳室内出血の場合もあり。

もやもや病閉塞性変化の病期分類(鈴木分類)
第1期: Carotid fork狭小期
内頚動脈終末部の狭窄。
第2期: もやもや初発期
内頚動脈終末部の狭窄にもやもや血管が見られ始め、中大脳動脈の皮質動脈が拡張して見える。
第3期: もやもや増勢期
もやもや血管が増勢し前大脳動脈、中大脳動脈群が脱落し始める。
第4期: もやもや細微期
もやもや血管は退縮し、前大脳動脈、中大脳動脈群がほとんど見えなくなる。後大脳動脈が脱落し始める。
第5期: もやもや縮小期
内頚動脈系主幹動脈がほとんど消失。
第6期: もやもや消失期
外頚動脈および椎骨動脈系よりのみ血流保全。

もやもや病の診断基準 
(1)診断上、脳血管撮影は必須であり、少なくとも次の所見がある。
  @ 頭蓋内内頸動脈終末部、前及び中大脳動脈近位部に狭窄又は閉塞がみられる。
  A その付近に異常血管網が動脈相においてみられる。
  B これらの所見が両側性にある。

(2)ただし、磁気共鳴画像(MRI)と磁気共鳴血管撮影(MRA)により脳血管撮影における診断基準に照らして、
    下記のすべての項目を満たしうる場合は通常の脳血管撮影は省いてもよい。
  @ MRA で頭蓋内内頸動脈終末部,前及び中大脳動脈近位部に狭窄又は閉塞がみられる
  A MRA で大脳基底核部に異常血管網がみられる。
  B @とAの所見が両側性にある。

(3)もやもや病は原因不明の疾患であり、下記の特別な基礎疾患に伴う類似の脳血管病変は除外する。
  @動脈硬化 A自己免疫疾患 B髄膜炎 C脳腫瘍 Dダウン症候群 Eレックリングハウゼン病 F頭部外傷 G頭部放射線照射
  Hその他

もやもや病の画像所見
CT
・梗塞巣及び出血巣が描出される。
・反復例では多発性の病変を認める。
MRI
・MRA 上、内頚動脈末端の閉塞あり。
中大脳動脈水平部での flow void の描出が不良となる。
基底核を中心に、側副血行路を反映した多数の flow void を認める。
・梗塞巣、出血巣が描出される。
・脳表に、発達した側副血行路に一致した FLAIR 像での高信号域、造影 MRI での造影強効果を認める。(Ivy sign)


 まとめ

もやもや病は、病期が進行すると後大脳動脈に狭窄を合併する場合もある

MRA所見以外にMRI水平断でも確認できるもやもや病の画像所見
1. 中大脳動脈水平部の描出不良、細いflow void
2. 基底核やその付近の側副血行路
3. 脳表の側副血行路

 


参考文献

  • 黒田敏 もやもや病における後大脳動脈狭窄病変の臨床的意義, 脳神経外科 30: 1295-1300, 2002
  • Tomomi Kimiwada, Posterior cerebral artery stenosis and posterior circulation revascularization surgery in pediatric patients with moyamoya disease. J Neurosurg Pediatr 21: 632−638, 2018