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第 395 回 東京レントゲンカンファレンス[2019年10月24日]

症例5 10歳代 男性:頬部腫脹
歯原性角化嚢胞を合併した基底細胞母斑症候群(ゴーリン症候群)
odontogenic keratocysts in basal sell nevus syndrome(Gorlin-Goltz Syndrome)

 

 基底細胞母斑症候群(Gorlin症候群)

・1960年にGorlinとGoltzによって報告された神経皮膚症候群で、先天奇形や高発癌性を特徴とする常染色体優性遺伝疾患である。
Gorlin RJ, et al. Multiple nevoid basal-cell epithelioma, jaw cysts and bifid rib. A syndrome. N Engl J Med 1960;262:908-12. ・基底細胞癌や皮膚小陥凹、多発顎骨嚢胞、骨格形態異常を主徴とする。
・疫学は世界各国で5万から20万人に1人程度。日本国内では300人以上存在してる。
平成22〜23年の厚生労働省難治疾患克服研究事業 ・原因として遺伝子として癌抑制遺伝子であるPTCH1遺伝子の変異が報告されている。
藤井克則、片瀬七朗ほか Tumor syndromes 臨床画像2015年10月増刊号

Kimonisらの診断基準は2つの大項目もしくは1つの大項目と2つの小項目があれば臨床的に診断できる。
大項目 小項目
 ・基底細胞癌
 ・顎骨の歯原性角下嚢胞
 ・手掌足底の小陥凹
 ・大脳鎌の石灰化
 ・肋骨異常(二分肋骨)
 ・1親身以内の家族歴
 ・大頭症
 ・先天奇形(口唇口蓋裂、前頭突出、粗野顔貌など)
 ・骨格異常
 ・X線検査の異常
 ・卵巣繊維腫
 ・髄芽腫

Tanabe R, et al. Golin症候群における臨床的検討: 脳と発達 2009; 41: 253-257
Kimonis VE, et al. Clinical manifestations in 105 persons with nevoid basal cell carcinoma syndrome. Am J Med Genet 1997;69:299-308.

・本疾患は根治的治療はなく基本的に対処療法。歯原性角下嚢胞と基底細胞癌に対しては外科的治療が行われている。
・米国では2012年に分子標的薬が認可され、治療が行われている。
藤井克則、片瀬七朗ほか Tumor syndromes 臨床画像2015年10月増刊号


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・基底細胞母斑症候群は稀な疾患で多様な症状を呈することから、診断が遅れることがある。
・本症候群は高発癌性の疾患であり早期の診断/治療のため、画像診断の役割が重要となる。

 


参考文献

  • Satheesh C, et al. Odontogenic Keratocysts in Gorlin−Goltz Syndrome: A Case Report: J Int Oral Health. 2015; 7: 76−79
  • Tanabe R, et al. Golin症候群における臨床的検討: 脳と発達 2009; 41: 253-257
  • Jawa DS, et al. Sircar K, Somani R, Grover N, Jaidka S, Singh S. Gorlin-Goltz syndrome. J Oral Maxillofac Pathol. 2009;13(2):89−92
  • 豊田圭子 頭頸部領域の画像診断 738-739, 764-765