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東京レントゲンカンファレンス TOP症例一覧 第399回症例 症例:呈示
第 399 回 東京レントゲンカンファレンス[2023年2月16日]
症例4 50歳代 男性
正中弓状靱帯症候群に起因した膵十二指腸動脈瘤破裂
Ruptured pancreaticoduodenal artery aneurysm associated with median arch ligament syndrome

 

 画像所見まとめ

・後腹膜血腫+骨盤底に血性腹水貯留
・膵頭部近傍(膵十二指腸アーケード領域)に仮性動脈瘤疑い ⇒内臓動脈瘤の破裂? MALSやSAMなどを背景とした出血を疑う。
・腎障害:高度脱水+出血による腎前性 ⇒診断、治療方針の決定のため、造影CTをrecommend

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VR 造影CT(矢状断)
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 診断・治療方針

【診断】
正中弓状靭帯症候群(Median arcuate ligament syndrome)に起因するAIPDA動脈瘤破裂⇒後腹膜出血。

【治療方針】
IVR(血管塞栓術)

IVR
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Labo data 受診日 造影CT+TAE翌日 1か月後 
BUN 39.1 37.7
8.6 mg/dl
Cre 2.25 1.42 0.67 mg/dl
eGFR 25 42 95  ml/min/1.73m2
Hb 15.7 12.6 12.8 g/dl
 
消化管透視検査
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 Median arcuate ligament syndrome:MALS

正中弓状靭帯症候群, median arcuate ligament syndrome

【概念】
通常は腹腔動脈の頭側で交叉する正中弓状靭帯が、腹腔動脈の腹側で交叉する。
腹腔動脈狭窄:アジアでは10%弱で、大半が正中弓状靭帯に起因。  ⇒MALSの罹患率は1%未満

【症状】
多くが無症状.腹腔動脈圧排による血流異常消化器症状
血流異常:内臓動脈瘤の発生因子
SMA-膵十二指腸アーケードを介した肝血流への代償的な血流量増加。
多くの場合、膵十二指腸アーケードに形成された動脈瘤が破裂し、突然の激痛やショックを呈することで発見される。
消化器症状:虚血症状=食後の上腹部痛、食後の疲労、吐気・嘔吐、体重減少など。腹腔神経節圧迫による交感神経依存性疼痛機序も。

Horton KM, et al. Radiographics. 2005;25(5):1177-82.

【診断】
CT、MRI、US、血管造影
CT:腹腔動脈起始部が軟部組織により頭側から圧迫されhook状に狭窄。狭窄後拡張。
深吸気撮影では、狭窄が目立たなくなる可能性あり

Sagittalが診断に有用

 

【治療】
膵アーケード動脈瘤破裂:TAE、外科手術
膵頭部領域の動脈瘤では、止血率・合併症率・死亡率いずれもTAEが優れる
森田ら; IVR 1999; 14:334-42.血腫による十二指腸狭窄症状の合併。
小川;救急医学2021;45(4) :419-424.
MALSに対する根治術:正中弓状靭帯の切離。
自然史についてはまだ明らかでない点も多く、適応や適切な治療法については一定の見解が得られていない。

 

 ER受診患者の腎障害発現率

急性腎障害の発生率の増加と関連しなかった。
6ヵ月後の慢性腎臓病、透析、腎移植の発生率の増加とは関連がなかった。
Hinson JS Ann, Emerg Med. 2017

 

 急性腎不全患者における造影剤投与後の腎機能

AKI患者に対する造影剤投与は、退院時のAKI持続、および180日以内の透析開始のいずれとも関連しなかった
https://doi.org/10.1007/s00134-022-06966-w

 

 結語

・基礎疾患のない症例で膵十二指腸アーケードからの出血を認めた場合、MALSやSAMの可能性があり、迅速な診断と治療が必要。
・放射線診断医の立場として、状況に応じて造影CT検査を臨床医に進言する必要がある。

 


参考文献

  • Horton KM, et al. Radiographics. 2005 Sep-Oct;25(5):1177-82.
  • Takach TJ, et al. J Am Coll Surg. 1996 Dec;183(6):606-10.
  • Vandy FC, et al. Ann Vasc Surg 2017; 41: 32−40.
  • M de Perrot, et al. Ann Surg. 1999 Mar;229(3):416-20.
  • 森田ら; IVR 1999; 14:334-42.
  • 藤澤ら;日消誌 2005;102:1146-52.
  • 小川;救急医学2021;45(4) :419-424.
  • Hildebrand P, et al. Ann Vasc Surg 2007; 21: 10―5.
  • Hinson JS, et al. Ann Emerg Med. 2017 May;69(5):577-586
  • Michael R Ehmann, et al. Intensive Care Med. 2023 Jan 30.

   
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Moderator: 粕谷 秀輔