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第 404 回 東京レントゲンカンファレンス[2023年10月26日]

症例3 50歳代 男性:右上腹部痛
退縮性胚細胞腫瘍のリンパ節転移
lymph node metastasis of regressed germ cell tumor

 

 退縮性胚細胞性腫瘍 Regressed germ cell tumor (burned out testicular tumor)

・精巣胚細胞性腫瘍の1.4-5%は部分的、或いは完全な退縮を示すと言われている
・転移病変、特に後腹膜の転移病変が先行することが多い
・viableな病変が精巣内に残存している場合に転移病変に対する化学療法のみを行うと、
 血液精巣関門のために精巣内病変が残存し、再発の原因になりうる
・腫瘍マーカーの測定(特にAFPやhCG)は診断に有用だが、必ずしも上昇しない
・転移巣の所見は組織型に準ずると考えられる(セミノーマなら均一, 非セミノーマであれば不均一で出血や石灰化を含みうる)
・若年成人から中年男性のprimary landing zoneに存在する腫瘍は胚細胞性腫瘍の転移を鑑別に挙げる

宮居弘輔. 精巣腫瘍病理アトラス. 文光社. 2021年
山下康行 編. 知っておきたい泌尿器のCT・MRI 改訂第2版. 秀潤社. 2019

 

 腫瘍マーカー

胚細胞腫瘍の代表的な腫瘍マーカーはLDH, AFP, β-hCGの3つである
 LDH   進行期精巣腫瘍の80%で陽性となるが、非特異的である。
 AFP   非セミノーマの50〜70%で陽性
 β-hCG 非セミノーマの40〜60%で陽性

それほど感度が高くない→除外診断には使えない
日本泌尿器科学会 編. 精巣腫瘍診療ガイドライン. 2015年.

 

 primary landing zone
   
右精巣腫瘍は大動静脈間リンパ節、
左精巣腫瘍は左腎静脈尾側の傍大動脈リンパ節がそれぞれ最初に灌流される部位であり、
リンパ節転移の好発である
山下康行 編. 知っておきたい泌尿器のCT・MRI 改訂第2版. 秀潤社. 2019年.より

 

 退縮後の胚細胞腫瘍の画像所見

・超音波所見の報告が多く、低エコーにも高エコーにも描出され、微小石灰化や精巣微石症を伴うことがあるとされる
・CT, MRI所見は報告が少ない
  精巣の萎縮
  微細な石灰化
  T2強調像における楔状, 点状の低信号域→軽微な異常所見を見逃さないことが大事

山下康行 編. 知っておきたい泌尿器のCT・MRI 改訂第2版. 秀潤社. 2019年.
CC Moreno. RadioGraphics 2015; 35:400–415


 Take Home Message

・若年成人〜中年男性のprimary landing zoneに腫瘍を見たら、精巣腫瘍の転移を想起する必要がある
・また、その際にはburned out tumorの可能性があることを念頭に置き、
  軽微な所見を見落とさないように注意しながら精巣を評価する必要がある
・腫瘍マーカーの感度はそれほど高くなく、除外診断に不向き

 


参考文献

  • 日本泌尿器科学会・日本病理学会・日本医学放射線学会・日本臨床腫瘍学会 編. 精巣腫瘍取扱い規約 第4 版. 2018年.
  • 宮居弘輔. 精巣腫瘍病理アトラス. 文光社. 2021年
  • 山下康行 編. 知っておきたい泌尿器のCT・MRI 改訂第2 版. 秀潤社. 2019年.
  • 日本泌尿器科学会 編. 精巣腫瘍診療ガイドライン. 2015年.
  • CC Moreno. RadioGraphics 2015; 35:400‒415