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第 406 回 東京レントゲンカンファレンス[2024年1月25日]

症例2 60歳代 男性:腹痛
異所性膵炎
ectopic pancreas with inflammation

 

 異所性膵

・正常膵と解剖学的に連続性を欠き、血行支配も異なる、異所性に存在する膵組織。迷入膵、副膵とも呼ばれる。
・剖検頻度は0.6%–13.7%[1-3]
・胃・十二指腸に好発し、粘膜下腫瘍の形で存在することが多い[3]
・大きさは2cm未満のものが多いが、稀に5cm程度の報告もある[3,4]
・無症状の場合が多く、腹部手術や内視鏡検査時に偶然発見されることが多い。
・膵炎や、ごく稀に膵癌を合併するという報告もある[4-6]
・予防的切除を積極的に行う必要はないが、症状が繰り返される場合や悪性が疑われる場合は切除が考慮される[5]

[1]DUFF GL.Arch Surg,46:494–503
[2]J.Max BUSARD.Arch Surg,60:674-682
[3]Feldman M.JAMA,148:893–898
[4]KJ Mortele.RadioGraphics,26:715-732
[5]木村 研吾.日臨外会誌,71:3108-3112
[6]戒能 美雪.膵臓,31:97-103

【異所性膵の診断
・CT、MRI、上部消化管内視鏡、EUS-FNAが診断に有用。
・他の消化管粘膜下腫瘍との鑑別に苦慮する場合がある。
・術前に診断がつかず、切除後の病理診断にて異所性膵と判明する症例も数多く報告されている[7]

[7]佐藤正幸.日消外会誌,42:1384-1389

【病理組織学的分類

・Heinrich分類が用いられる。
・異所性膵の構成成分によりⅠ・Ⅱ・Ⅲ型に分類される。

  Langerhans島 腺房細胞 導管
Ⅰ型 あり あり あり
Ⅱ型 なし あり あり
Ⅲ型 なし なし あり
[8]より改変

・正常膵組織に近いⅠ・Ⅱ型では合併症の発生率がより高いと考えられている[7]
[7]佐藤正幸.日消外会誌,42:1384-1389
[8]Hans von Heinrich.Virchows Arch,198:392-401

 画像上の特徴

・正常膵と同様の特徴的な分葉状構造を取る[9]
・Dynamic CTやMRIにて膵実質と同様の造影パターンを呈する[9]

上部消化管に好発する他の粘膜下腫瘍(GIST、平滑筋腫)との鑑別では、以下の5項目が有用という報告がある[10]
Ⅰ.腫瘍部粘膜の強い造影効果
II.境界が不明瞭
III.病変が胃前庭部、幽門または十二指腸に存在
IV.長径/短径比>1.4
V.管腔内発育パターン

Ⅰ.腫瘍部粘膜の強い造影効果
・異所性膵によって引き起こされた反復炎症性変化により、腫瘍部粘膜が強く増強されると考えられている。
・感度は28.6%と低いが特異度100%と報告されている。

Ⅱ.境界が不明瞭
・膵臓の腺房の小葉構造により境界が不明瞭になると考えられている。
・異所性膵の71%が境界不明瞭な一方、GISTの94%、平滑筋腫の100%(n=7)が境界明瞭と報告されている。

Ⅲ.病変が胃前庭部、幽門または十二指腸に存在
・異所性膵は他の粘膜下腫瘍と比較し、胃前庭部、幽門、十二指腸に存在する割合が有意に高い[10-13]
・異所性膵の85.7%がこれらの部位に存在したとの報告あり[10]
・GISTは胃体部や胃底部、平滑筋腫は噴門に多く、胃前庭部・幽門・十二指腸に存在するものはわずか17.5%であった[10]

Ⅳ.長径/短径比
粘膜下腫瘍の形状を分類

・異所性膵は平坦~卵型、GISTや平滑筋腫は卵型~円形を取るケースが多い
長径/短径比のカットオフ値を1.4とすると、感度64.3%、特異度82.5%

Ⅴ.発育パターン
粘膜下腫瘍の発育パターンを以下の3種類に分類

Ⅰ:管腔内発育パターン
腫瘤が管腔外空間に膨らむことなく腸管腔内に完全に限局した状態

Ⅱ:管腔外発育パターン
腫瘤が腸管腔内に膨らむことなく管腔外空間に限局している状態

Ⅲ:混合パターン
上記のいずれでもない場合

・異所性膵は86%が管腔内発育パターンを示す
[9]山下康行.肝胆膵の画像診断,306-307
[10]JY Kim.Radiology,252:92-100
[11]Rooney DR.Radiology,73:241-244
[12]Thoeni RF.Gastrointest Radiol,5:37-42
[13]EF Besemann.AJR,107:71-76

 

 他の粘膜下腫瘍との鑑別ポイント

項目 ○3項目該当
 腫瘍部粘膜の強い造影効果
 境界が不明瞭
 病変が胃前庭部、幽門、十二指腸に存在
 長径/短径比>1.4
 管腔内発育パターン

2項目該当 :感度100%、特異度82.5%
3項目該当 :感度78.6%、特異度97.5%
4-5項目該当 :特異度100%
[10]JY Kim.Radiology,252:92-100

 

 結語

・臍部痛で発症した十二指腸異所性膵による膵炎の症例を経験した。
・異所性膵の多くは無症候性だが、膵炎や稀に膵癌の発生母地となる。
・術前診断は難しい場合も多いが、CT・MRIが有用である。


 


参考文献

  • [1]DUFF GL. Arch Surg,46:494–503.
  • [2]J.Max BUSARD.Arch Surg,60:674-682.
  • [3]Feldman M.JAMA,148:893–898.
  • [4]KJ Mortele.RadioGraphics,26:715-732
  • [5]木村 研吾.日臨外会誌,71:3108-3112
  • [6]戒能 美雪.膵臓,31:97-103
  • [7]佐藤正幸.日消外会誌,42:1384-1389
  • [8]Heinrich H.Virchows,198: 392-401
  • [9]山下康行.肝胆膵の画像診断,306-307
  • [10]JY Kim.Radiology,252:92-100
  • [11]Rooney DR.Radiology,73:241-244
  • [12]Thoeni RF.Gastrointest Radiol,5:37-42
  • [13]EF Besemann.AJR,107:71-76