第 409 回 東京レントゲンカンファレンス[2024年5月30日]
| 症例5 70歳代 女性:蛋白尿精査のために撮影されたCTで多発肺結節と多発肝腫瘤を指摘された。 |
| 類上皮血管内皮腫 epithelioid hemangioendothelioma |
| 類上皮血管内皮腫 |
・類上皮血管内皮腫(epithelioid hemangioendothelioma : EHE)は非常に稀な低悪性度の血管腫瘍である。
DailとLiebowが1975年に肺EHEの症例を初めて報告した。
発症率は0.038/10万人/年、有病率は100万人に1人未満といわれている。1)2)3)4)8)
・30-50歳代でよく認められ、男女比は2:3という報告がある。
病因として経口避妊薬の使用歴や肝外傷歴、アルコールなどが指摘されているが、明確なものは不明である。
AFP,CEA,CA19-9などの腫瘍マーカーは正常範囲内。1)2)4)5)
・肝EHEの25%~50%の患者は無症状と言われている。
症状として右上腹部痛、腹部不快感、食欲不振、発熱、嘔吐などが出現する。1)2)4)
・EHEは体内のどの部位にでも発生し、単発、多中心性発生、全身転移と様々な病型を呈する。
頻度は、肝臓単独(21%)、肝臓+肺(18%)、肺単独(12%)、骨単独(14%)という報告がある。1)3)
・標準的な治療法は定まっていないが外科的切除や化学療法、放射線治療が検討される。
肝病変には肝移植も選択肢の1つになる。経過観察で腫瘍が自然縮小するという報告もある。1)4)6)
・予後は比較的良好で、患者の半数が無治療で5年以上生存したという報告がある。4)
FDGの集積が高い症例は予後が不良という報告がある。6)
| 肝EHEの画像所見 |
CT:
・単純CTでは低吸収の腫瘤として描出される。
・肝辺縁の陥凹や石灰化(20%)を認めることもある。
・造影CTでのlollipop sign(脈管が腫瘤に突き当たり途絶して見える像)、
target sign(腫瘤内部が辺縁より造影不良)は本疾患に特徴的な所見とされる。 4)5)7)8)
MRI:
・T1WIで低信号、T2WIで内部高信号を呈する(target sign) 。
・肝辺縁の陥凹や造影MRIでlollipop sign を認める。1)4)7)8)
FDG-PET/CT:
・
軽度~中等度のFDG集積亢進 (SUVmax:2.6~10.5)を認める。1)6)
| 肝EHEの鑑別疾患 |
肝転移、肝内胆管癌、血管肉腫や硬化型肝細胞癌 などが鑑別に挙がる。1)2)4)
| 肺EHEの画像所見 |
・肺EHEはCTで4つのパターンを認める。多発結節パターンが最頻。
両肺気管支血管周囲に1-2cmの結節が多数散見される。
腫瘍の石灰化や空洞病変は稀と言われている。1)8)
・FDG-PET/CTでは肝EHE同様、軽度~中等度のFDG集積亢進(SUVmax:1.2~8.5)を認めるという報告がある。1)6)
| EHEの病理所見 |
・膠原質の間質に索状の類上皮細胞を認める。1)4)
・t(1,3)(p36; q25)転座によりWWTR1-CAMTA1融合遺伝子が95%で認められ、核にCAMTA1が発現される。
他、CD31、CD34、FLI-1などの内皮分化マーカーを発現している。1)2)4)
| 結語 |
・肝EHE、肺転移という非常に稀な症例を経験した。
・肝EHEは60%~80%の割合で誤診されるという報告があり2)、肝臓のCT、MRIで被膜下に多発した癒合傾向のある腫瘤、辺縁の陥凹、石灰化やlollipop sign, target signといった所見を認めた場合は本疾患を鑑別に想起することが重要と考える。
参考文献