| 免疫チェックポイント阻害薬関連脳炎 encephalitis induced by immune checkpoint inhibitors |
| 画像所見まとめ |
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頭部MRI→辺縁系脳炎?
T2WI/FLAIRにて右島回皮質下白質・両側側頭葉内側(扁桃体・海馬)・脳弓に信号上昇を認める.
明らかな出血・造影効果・拡散低下を認めない.
胸部CT→化学療法後?
右下葉の不整形腫瘤は1年の経過で消失している. 術後性変化なし.
| 臨床経過 |
肺癌に対する化学療法の経過において辺縁系脳炎を発症→治療に用いた薬剤は?
血液検査にて甲状腺機能低下あり(FT4 0.76 ng/dL FT3 1.43 ng/dL).

化学療法前後にて甲状腺の軽度萎縮と機能低下あり→免疫チェックポイント阻害剤?
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カルテを参照すると, 1コース目の化学療法後に再発あり.
2コース目としてペンブロリズマブ(抗PD-1モノクローナル抗体)の開始された.
甲状腺機能低下を踏まえると, 脳炎は免疫関連有害事象(irAE)によるもの?
| 辺縁系脳炎の鑑別 |
・ヘルペス脳炎→単純ヘルペスウイルスや水痘帯状疱疹ウイルスのPCR陰性
・傍腫瘍性症候群→腫瘍は縮小しており, やや考えにくい? 
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irAEによる脳炎を疑い, 休薬とステロイド療法を開始.
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症状は改善を示し, MRIでの信号変化も消退した.
扁桃体の萎縮が残存し, 認知機能低下は改善しなかった.
診断:免疫関連有害事象(immune-related adverse events:irAE)
| 免疫関連有害事象(immune-related adverse events:irAE)による脳炎 |
・irAEとは免疫チェックポイント阻害薬による免疫過剰反応に伴う有害事象の総称であり, 全身臓器に障害を呈しうる.
・神経系におけるirAEの種類としては頻度順に筋炎, ニューロパチー(末梢神経), 筋無力症, 脳炎, 髄膜炎, 脱髄, 脊髄炎などが挙げられる.
・症状は精神異常, 認知機能障害, 痙攣, 運動障害, 発熱, 頭痛などで発症する.
・髄液検査にて細胞数や蛋白の上昇が見られ, 自己抗体陽性例・陰性例いずれもあり.
投与からの平均発症期間は8週間. 再発率は12%程度に見られる.
・治療法はステロイド療法, 血漿交換, 大量免疫グロブリン静注, 抗体療法(リツキシマブ)などが行われる.
Velasco, R. JAMA Neurology, 78:864-873, 2021
Alessandro Marini. American Academy of Neurology , 96:754-766, 2021
| irAEによる脳炎のMRI所見 |
・T2WI, FLAIRにおける信号上昇(左右対称性に見られることが多い)
辺縁系(22%)に最も多く見られ, その他には間脳系・脳幹・脊髄・基底核・小脳などに見られることもあり
→辺縁系脳炎として発症することが多い.
・その他のシーケンス(DWI, 造影効果など)に関するまとまった報告はなし.
・MRIにて異常が見られない例もある.
Velasco, R. JAMA Neurology, 78:864-873, 2021
| 本症例に関して |
・辺縁系脳炎であり, irAEによる脳炎は鑑別になるが, 所見は非特異的.
・肺癌に対する免疫チェックポイント阻害薬使用後からの発症であり,
irAEによる脳炎が辺縁系を侵す頻度が高いことを踏まえると鑑別の上位に挙がる. (ただし, 感染の除外は必要)
・本症例では甲状腺の萎縮/機能低下も見られており, irAEを想起させる所見あり.
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臨床背景を想起して鑑別疾患の重み付けをすることも可能
| Take home massage |
・辺縁系脳炎として発症したirAEによる脳炎の1例を経験した.
・免疫チェックポイント阻害薬の使用は今後も増加していくことが予想されることからirAEの画像所見には精通しておく必要がある.
・非特異的所見であっても, 臨床所見・経過を想起することでより精度の高い診断に結びつく.
参考文献
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