●症例 5 70歳代 男性

 緊急手術が施行され、正中切開にて開腹後、腹壁直下に黒色の腫瘤が認められた。腫瘤を検索すると、胆嚢床において胆嚢間膜捻転をきたした胆嚢であることが判明し、胆嚢捻転症と診断された。

開腹時所見
開腹時所見 開腹時所見

●確定診断:胆嚢捻転症

胆嚢捻転症は胆嚢頚部の捻転により血行障害をきたし、胆嚢に壊死性変化が急速に生じる病態で、緊急手術を要するため、急性腹症のひとつとして、忘れてはならない重要な疾患である。
胆嚢捻転を来たす誘因としては、先天的因子として胆嚢実質が胆嚢床に直接接しておらず、可動性に富む遊走胆嚢(浮遊胆嚢)の存在があり、これにねじれをきたす後天的因子(内臓下垂・老人性亀背・脊椎側彎・るいそう)および物理的因子(腹腔内圧の急激な変化、急激な体位変換、前屈位における振り子様運動、排便、腹部打撲、胆嚢近傍臓器の蠕動亢進)が加わり発症するとされている。
正常胆嚢が同定出来ず、異常な嚢胞性構造物が胆嚢である可能性を考慮することが、大切なポイントと思われるが、胆嚢自体のCTおよび腹部超音波の画像所見として、
  胆嚢腫大
  胆嚢壁肥厚
  胆嚢と胆嚢床との遊離あるいは接触面積の狭小
  胆嚢の正中側または下方偏移
  胆嚢頚部の狭小化と軸捻転の実質エコーの増強
  造影CTにて肥厚した壁は増強効果を呈さないこ
とが挙げられる。

● 参考文献
1)須崎真、池田剛、坂井秀精、ほか:胆嚢捻転症の1例-本邦236例の検討-.胆と膵15:389-393,1994.
2)藤井巧衛、江尻友三、菅野則夫、ほか:胆嚢捻転症.肝外胆道編 別冊 日本臨床 領域別症候群 9:468-470,1996.
3)篠田憲幸、廣瀬聡、鈴木智貴、ほか:術前診断が可能であった胆嚢捻転症の1例.日腹救医会誌 17:325-328,1997

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Moderator:日紫喜裕子



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