診断:頚髄血管芽腫(手術により摘出、von
Hippel Lindau病の合併なし)
解 説
脊髄病変の出血により、くも膜下出血をきたすことがある(くも膜下出血の0.05 - 0.6%)。非腫瘍性としては動静脈奇形(arteriovenous
malformation: AVM)が最多である。腫瘍では上衣腫が多いが、まれに血管芽腫が原因となることがある。
脊髄血管芽腫の約半数は胸髄に生じるが、くも膜下出血をきたした例のほとんどは頚髄に生じている。臨床的には病変部に一致した疼痛、四肢への放散痛で発症し、これらの症状が頭痛に比べ高度なことが特徴だが、頭痛が先行することもある。このため、脳CTでくも膜下出血と診断されても、脳血管造影で出血源がわからないことも多い。CTで血腫がテント下優位に分布する非典型的くも膜下出血では、脊髄、特に頚髄の血管性、腫瘍性病変も考慮することが大切である。
脊髄血管芽腫の検出にはMRIが最も適しており、ガドリニムによる造影が必須である。
典型的な脊髄血管芽腫のMRI所見は、
1)脊髄が腫大する。
2)髄内腫瘍が多く、 しばしば脊髄背側に偏在する。
3)腫瘍はT1強調像で脊髄と等信号、T2強調像で高信号である。
4)造影T1強調像では腫瘍結節が均一に強く造影される。境界明瞭で、ときに嚢胞を伴う。
5)流出静脈が線状の低〜無信号域としてみられる。
MRIにおける髄内腫瘍の鑑別としては上衣腫や星細胞腫がよくしられる。上衣腫は潅流静脈を欠き、星細胞腫は境界不明瞭で造影効果が乏しいことが鑑別のポイントである。AVMはnidusが同定されれば容易に診断できる。脊髄梗塞や多発性硬化症、急性散在性脳脊髄炎が類似所見を示すこともあるが、くも膜下出血の併存はない。
参考文献
Neurosurgery 27, 991-993, 1990
Neurol Med Chir 38, 355-358, 1998
Surg Neurol 49, 278-281, 1998
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