例8 50歳代 男性
術中所見
開腹すると左上腹部に巨大な嚢胞性病変を認めた。内容は陳旧性の血腫から新鮮な血液に至るまでが混在し各々が隔壁に包まれていた。
手術標本

病理(HE染色)

病理結果

Cytokeratin:陰性
Vimentin・bcl-2・NSEが陽性
Ki-67は20%程度が陽性
CD99はごく一部が陽性
※SYT(18q11.2)dual color, break apart probeを用いたFISHにてsplit signal(+) ⇒ SYT変異(転座)あり

診断は 滑膜肉腫 (Monophasic fibrous type)

滑膜肉腫

  • 関節近傍に発生する腫瘍であり、「滑膜」という名称でありながら関節内にはほとんど発生しない
  • 滑膜とは全く関係のない咽頭周囲・腹壁・胸膜・心臓にも見られる
  • 15-40歳に好発し男女比は1.2:1.0
  • 一般的にSlow growing
  • 膝関節近傍などの四肢に好発(特に下肢)
  • 体幹発生は全体の8%程度を占めるが腹腔内発生の報告は珍しい
  • X染色体と第18染色体の転座[(X;18)(p11;q11)]が原因で起こる腫瘍でSS18/SSX遺伝子の特定が確定診断で有効である。
  • 若年から成人に好発し、単発性の軟部由来深在性腫瘍である。関節とは関係なく発生し、壊死・嚢胞・石灰化が認められることがある
  • MRIではtriple signal sign を呈することがあるが、CTでは特異的な所見はない
・画像所見と鑑別診断へ
・症例提示へ

Moderator : 橋本 一樹・戸矢 和仁