第309回 東京レントゲンカンファレンス
2008年11月27日開催
症例5 60歳代 男性
 
  虫垂癌(十二指腸浸潤)
duodenal invasion of appendiceal carcinoma
 

上部消化管内視鏡像
・十二指腸下行脚に隆起性病変を認める

造影CT  axial 像
・虫垂が回盲部より上行し、十二指腸の腫瘤に向かっている

 

 

 

 


造影CT Coronal像 (未提示)

スライス厚:6mm

 

 

 

 


腹部血管造影

・十二指腸に明らかな腫瘍濃染を認めない
・やや拡張した虫垂動脈が上行している 
  腫瘍濃染は明らかではない

 

 

 



鑑別疾患

・CT Coronal像を見てしまうと「虫垂癌の十二指腸浸潤」が最も reasonable
・しかしかなり稀な病態であり、「十二指腸癌+慢性虫垂炎」のほうが可能性は高いかもしれない…


病理
H-E 染色 ルーペ像
十二指腸の正常粘膜が画面右上に見られ、下方から虫垂癌が浸潤している。粘液癌と腺癌の成分が混在している。


H-E 染色 ルーペ像
虫垂内腔を這うように癌細胞が伸展しており、虫垂癌の診断となった。


 

手術記録
・「膵頭十二指腸切除を予定していたが、術中に虫垂癌の十二指腸浸潤と判明し、
  十二指腸楔状切除+回盲部切除に変更」
⇒ 術前に可能性を十分伝えるべきであった

虫垂癌について
・消化管悪性腫瘍の0.5%以下と言われている
・虫垂に発生する腫瘍の90%は Carcinoid
・病理組織型は
 Mucinous type (55%) 腹膜偽粘液腫のかたちをとることも多い
 Colonic type (45%) であったという報告あり(n=94)
・重複癌・異時性癌が多い
・治療は右半結腸切除が標準的
・高齢者の急性虫垂炎・穿孔後膿瘍として発症することが多い

「虫垂癌」を検索すると
・巨大化して膀胱・卵巣・子宮・腸腰筋・小腸などへ浸潤したとの報告が多い印象
・腹膜偽粘液腫・急性虫垂炎の原因疾患としての報告も多い
・十二指腸浸潤は一例のみ検索し得た

 

結語
・十二指腸浸潤を来した虫垂癌という稀な病態を経験した
・術前診断として鑑別に虫垂原発の悪性腫瘍をあげ、外科医に注意を促すべきであった



 
 

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Moderator:橋本 一樹