第310回 東京レントゲンカンファレンス
2009年1月22日開催
症例5 40歳代 男性
 
  限局性結節性滑膜炎
localized nodular synovitis(localized PVNSとも言われる)
 
T2  
膝蓋骨の下の脂肪織内に境界明瞭 
径3×1.8cm程の楕円形腫瘤を認める。
辺縁がlowで囲まれ、内部はほぼ高信号で一部索状
のhighを呈している。

T1WI  
腫瘤はほぼ均一な low intensity をしめしている。

T2WI脂肪抑制 coronal  
腫瘤はT2*と同様に中央部がhighで辺縁がlowです。
その後手術がなされました。

病理  
弱拡大
中央左よりに褐色部分が見られます。
ここがヘモジデリンの沈着です。
周囲は細胞成分と繊維化です。
薄いピンクの部分が繊維化です。
強拡大
褐色の部分がヘモジデリン沈着部です。
先ほどのMRI画像で腫瘤の辺縁がlowになっていましたが、その部分がヘモジデリン沈着を反映していたと思われます。
大きい細胞が多核巨細胞で左下の小さいものが単核間質細胞になります。

病理のまとめ
・多核巨細胞
・単核間質細胞
・ヘモジデリン貪食細胞
   以上より組織は多核巨細胞、単核間質細胞、ヘモジデリン貪食細胞の3つが揃い、
  これが病理学的にPVNSの証拠となります。
     この3つの細胞が揃っていることがPVSの 証拠となります。

限局性結節性滑膜炎とは
・滑膜の繊維組織球性増殖疾患。びまん性PVNSと組織学的には同じもの。
・ 限局性結節性滑膜炎は関節内に発生するもので、関節外に発生するものは腱鞘巨細胞腫という。
・ 好発部位は膝関節、股関節、足関節。
・臨床症状は膝関節痛、Locking、膝関節腫脹、関節液貯留、可動域制限。
*PVNS=Pigmented villonodular synovitis 色素性絨毛結節性滑膜炎

PVNSと限局性結節性滑膜炎の違い
・びまん性のPVNSには滑膜の絨毛状や多結節状の増殖が見られるが限局性結節性滑膜炎では滑膜所見はない。
・ ヘモジデリン沈着が限局性ではPVNSに比べ少ない。
・ PVNSは関節内全体に滑膜炎が広がるが、限局性では結節状に成長し、大きくなると有茎性になる。

限局性結節性滑膜炎の画像所見
・類円形の境界明瞭な腫瘤が膝蓋骨下脂肪内に見られることが多い。
・その他膝蓋骨上の滑液包内やPCLの後ろなどに見られる。
・滑膜の肥厚や炎症所見は見られない。
・T1WIでは骨格筋より等信号またはやや低信号。
 T2WIでは不均一で高信号と低信号の混在。低信号の部分はヘモジデリン沈着を表す。
・造影画像では不均一な増強効果を示す。

鑑別診断
HoffaÅfs disease
Chondroma
Osteochondroma
Focal arthrofibrosis
Langerhans cell histiocytosis

参考文献
・Guo-Shu Huang, Chian-Her Lee, Wing P.Chan,Chen-Yu Chen, Joseph S.Yu and Donald Resnick Localized
 Nodular Synovitis of the Knee:MR Imaging Appearance and Clinical Correlates in 21 Patients.
  AJR2003;181:539-543
・C.Perka, K.Labs, H. Zippel and F. Buttgereit Localized pigmented villonodular synovitis of the knee
  joint: neoplasm or reactive granuloma? A review of 18 cases Rheumatology 2000;39;172-178
・Rafael Burgomeister Louren_o , Marcelo Bordalo Rodrigues Which Is Your Diagnosis ?
  Radiol Bras 2007;40(3):IX‐X

 
 

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