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第319回東京レントゲンカンファレンス
2010年2月25日
症例3 60歳代 男性
   

HTLV-1関連細気管支・肺胞異常症 HABA/HAB
HTLV-1 associated bronchiolo-alveolar disorder、HTLV-1 associated bronchopneumonopathy

 



胸部CT(10月:当院初診時)  
消化管

・右上葉優位に複数の肺葉に拡がる陰影
・小葉中心性粒状影
・気管支壁の肥厚
・軽度気管支拡張


消化管 消化管 消化管 消化管
10月(初診時)  11月 翌年3月 4年後7月
DPBとしてマクロライド系抗生剤による治療を行い一端改善するもその後気管支拡張が急速にびまん性に増悪。

胸部CT(4年後7月)

消化管

・全肺にわたる気管支拡張.
・肺底部のすりガラス状陰影+網状影出現→間質性変化

膠原病に伴う閉塞性細気管支炎を基礎とする慢性下気道感染やHTLV-1関連肺疾患などを考え精査を行ったところ抗HTLV-1抗体陽性であった.

HTLV-1:Human T-lymphotropic Virus type 1
・ヒトのT細胞に感染するレトロウィルス.
・国内に約100万人以上のキャリアが推定される.
・南西地方に多いとされるが、近年大都市圏でも増加傾向.   
 関東のキャリアは10.3(1988)→17.3%(2006)※献血者対象調査
・Adult T-cell lymphomaの他,HAM/TSP(HTLV-I関連脊髄症/熱帯性痙性対麻痺),
 HAU(HTLV-1関連ぶどう膜炎) ,HABAの原因として知られるが,多くは不顕性感染.

HABA:HTLV-1 associated bronchiolo-alveolar disorder
・1987年にHAM/TSP患者に併発するT細胞浸潤を特徴とする肺胞障害が報告された.
・その後,HAUあるいは無症候性のHTLV-1キャリアにも同様の病態が存在することが報告され,
 ATLに伴う腫瘍細胞浸潤や日和見感染とは異なる呼吸器病変として提唱された.
・HTLV-1感染T細胞に対するCD8陽性T細胞の免疫反応との関連が推測されている.

HABA/HABのCT画像所見
・HTLV-1キャリア98/320例(30.1%)の胸部CTで異常所見あり 
 小葉中心性粒状影(97%)
 気管支血管束肥厚(56%)
 すりガラス状陰影(52%)
 気管支拡張(51%)
 小葉間隔壁肥厚(29%)
 consolidation(5%),リンパ節腫大(5%),胸水(2%)

Okada F, Pulmonary CT Findings in 320 Carriers of Human T-Lymphotropic Virus Type 1. Radiology 240:559-564, 2006

HABAとDPBの比較
・HABAとDPBを比較した結果,初診時の年齢・性別・臨床症状,一般血液検査,呼吸機能検査,
 胸部CT所見に有意な相違や明確な鑑別点は見られなかった.
・BAL液中のIL-2R陽性細胞数はHABAで有意に高値であった.
・DPBの治療に関しては,マクロライド剤少量長期療法の著明な有効性が確立されている.
・一方,HABAに対し同治療を施行したところ,画像所見の変化は改善7/46例(15.2%),不変35/46例(76.1%),悪化4/46(8.7%)であり,呼吸機能の改善も不良であったとされる.
・近年,マクロライド剤の普及に伴い,DPBを経験する機会は急速に減少している.

Kadota J, Clinical similarities and differencesb between human T-cell lymphotropic virus type I-associated bronchiolitis and diffuse panbronchiolitis. Chest 2004;125:1239-1247.

当院で最近経験された HAB/HABA

 

20歳代女性

70歳代男性

消化管 消化管
→その後,ATLL発症

 

まとめ
・近年HTLV-1ウイルス感染は九州・沖縄・四国以外でもとくに東京・大阪などの大都市部で拡大しており,それに伴いHABAを経験する機会が増加している.
・一方,DPBの頻度は激減している.
・HABAはDPBと臨床上あるいは画像所見上酷似するが,マクロライド剤による治療効果に差がみられる.
・DPB類似の慢性気道病変をみた場合,HABAの可能性を必ず示唆することが重要と考えられる.


 
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Moderator: 村石 懐、負門 克典、松迫 正樹、齋田 幸久