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第329回東京レントゲンカンファレンス
2011年6月23日
症例2 20歳代 男性
    胃アニサキス
gastric anisakiasis


【主訴】腹痛、嘔気、倦怠感
【現病歴】
本日朝、腹痛で起床。軟便の排出を認めた。仕事に行ったが痛みに耐えられずに帰宅し近医を受診。
処方されたブスコパン服用後数時間は疼痛は軽減するが、その後また疼痛がぶり返してくる。
排便は朝以降なし。痛みには波があり。我慢できないくらい痛くなり当院時間外受診。
倦怠感は前日の夜より始まり、食事摂取不良であった。
昨日の昼の食事摂取は良好で、揚げ物や生もの(かつお、
シメサバなど)を摂取したが、一緒に摂取した家族には同様の症状なし。
【既往歴】 3〜4年前に「腸閉塞」。点滴で加療。手術歴なし。

 

画像上の鑑別・胃蜂窩織炎(急性化膿性胃炎)
・その他の急性胃粘膜病変(AGML):ストレス、アルコール、薬剤etc.

 

胃アニサキス症について・アニサキス幼虫が胃壁に刺入により発症。
 ─アレルギー反応が大きく関与。
・初感染すなわち過去にアニサキスに感作されていない場合、
 単に体内に侵入した異物に対する局所変化を示すのみで、組織学的には死滅した虫体を核とした寄生虫性肉芽腫の形成をみる。
 ─臨床的には慢性胃アニサキス症(緩和型)の多くがこの状態と考えられる。
 ─ほとんどが無症状に経過し検診や他疾患での開腹時に偶然発見されることもある。
・すでに感作されたヒトに再びアニサキスが侵入した場合、アレルギー反応が生じる。
 ─臨床的には急性胃アニサキス症(劇症型)がこれにあたり、胃アニサキス症として診断される。
・胃局所のおもな反応として、とくに粘膜下層に著明なびまん性好酸球浸潤、浮腫、線維素析出を認め、リンパ管や血管の拡張と軽度の出血も加わり、いわゆる好酸球性蜂窩織炎となり、局所の激しい痛みを生じる。
 ─おもにIII型(Arthus型)アレルギー反応によるものと考えられている。
・原因となる海産魚類:
 ─九州や関東地方ではサバ、イワシ、アジ。
 ─北海道ではタラ、ホッケ、イカ、サケ。
・摂取から発症までの時間は6時間前後が多く、ほとんどが12時間以内に発症。
・刺入部位:穹窿部から胃体部の大弯側が好発部位
 ─虫体は刺入と脱出を繰り返し、1箇所にとどまるとは限らないため、胃全体をくまなく検査する必要がある。
・血清免疫学的診断:
 ─ELISAキットによる抗アニサキス抗体の測定
・治療法:内視鏡による直視下での虫体の摘除。

橋本幸直, 仁尾義則. 胃アニサキス症:外科(0016-593X)65巻3号 2003.3;p270-273.

 

 

 

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Moderator:渡部 渉