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第329回東京レントゲンカンファレンス
2011年6月23日
症例4 60歳代 男性
    リンパ腫様肉芽腫症
lymphomatoid granulomatosis


病理所見(TBLB)・気管支周囲組織で、上皮下にリンパ球・形質細胞浸潤の他、核小体の目立つ核の腫大した細胞や多核の細胞が混在。
・明るい豊かな細胞をもつ細胞、一部に核分裂像。・別標本で小血管への細胞浸潤、一部壊死あり。
・EVG染色では、血管周囲にリンパ球が集まり、小血管への細胞浸潤あり。

 

左:HE染色/右:EVG染色

     
 

免疫染色では、炎症細胞浸潤を背景に大型の異型リンパ球の増殖が見られ、これらはCD20、CD79aが陽性であった(B細胞系を示唆)。
これらのほとんどがEBER陽性で、先ほどのHE染色にて血管破壊像を伴うことから、Lymphomatoid granulomatosisと診断された。EBER陽性細胞が1視野に50個以上(>20)みられたことから、Grade 3。

 

【診断】Lymphomatoid granulomatosis;LYG(リンパ腫様肉芽腫症)Grade 3

 

LYGの特徴・40〜60歳の男性に多い
・症状:発熱、咳嗽、倦怠感、体重減少、呼吸困難
・部位:肺に多い。他に皮膚、脳、腎臓、肝臓
・診断
 ➀多彩な細胞浸潤
 ➁血管壁への細胞浸潤
 ➂リンパ球浸潤部位における壊死

・治療:ステロイド、抗がん剤など。MTX関連が疑われればMTXの中止
・予後:Grade 2,3では予後不良な経過を辿るといわれる


<画像的特徴>
・気管支血管周囲の結節分布
・粗大で不整な浸潤影
・壁の薄い小嚢胞
・小結節の集簇

 

Jin Seong Lee, Lymphomatoid Granulomatosis: Radiologic Features and Pathologic Correlations, AJR 2000;175:1335-1339

 

画像所見

・左下葉S9の小結節影は、淡い索状影に変化した後、再度増大。
・CTにて、小結節近傍(B9b)に空洞を伴う境界明瞭な結節影が出現。経時的に増大し、2か月後のPET-CTではさらに増大。
・背景肺は、繰り返す細菌性・器質化肺炎と間質性肺炎により、線維化が進行。
・PETでは早期相、後期相のSUVmaxはともに高値を示す。


左下葉病変の比較
4年半前 → 2年半前 → 3日後      

 

LYGの鑑別

肺癌 → 腫瘍マーカー、増大率
悪性リンパ腫 → sIL2-R、LDH
感染症(細菌、真菌など)→ 炎症所見、培養
リウマチ結節 → 結節影の経過、リウマチの活動性
LYG → 結節影の経過、sIL2-R
結核 → 塗沫、培養検査
Sarcoidosis → リンパ節腫大
Wegenar肉芽腫 → ANCA陽性

 

経過

MTXの使用を中止したところ、3週間後のCTで結節影は縮小傾向を示した。 → MTX関連のLYGと考えられる。

 

 

MTX関連のリンパ腫 ・MTXにより誘発されたリンパ腫は、極めて高率にEBVが関与している。B細胞型の非ホジキンリンパ腫が多い。
・MTX誘発リンパ腫では、明らかな危険因子は知られていない(MTX投与量やシェーグレン症候群合併も危険因子にならない)。
・MTX誘発リンパ腫ではMTX中止及び少量の副腎皮質ステロイド投与で消失するが、自然退縮傾向がない場合は化学療法を考慮する。

『関節リウマチにおけるMTX診療ガイドライン』より
『病理診断におけるEBER in situ hybridizationの有用性』より

参考文献
1.Jin Seong Lee, Lymphomatoid Granulomatosis: Radiologic Features and Pathologic Correlations, AJR 2000; 175: 1335-1339
2.Takuya Miyazaki, Remission of lymphoma after withdrawal of methotrexate in rheumatoid arthritis: Relationship with type of latent Epstein-Barr virus infection, American Journal of Hematology 2007; 82: 1106-1109
3.川本研一郎,慢性関節リウマチ患者に合併した肺リンパ腫様肉芽腫症lymphomatoid granulomatosisの1例,診断病理 2007, 24巻1号, 66-69
4.金成元,関節リウマチ患者に合併した肺原発 lymphomatoid granulomatosisの一例, 日本リンパ網内系学会雑誌 2001, 41巻, 75

 

 

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Moderator:櫻町 円香