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東京レントゲンカンファレンス TOP症例一覧 第350回症例症例:呈示
第 350 回 東京レントゲンカンファレンス[2014年2月27日]
症例3 50歳代 女性
胸腺MALT リンパ腫
thymic MALT lymphoma

診断

前縦隔に嚢胞成分を有する充実性腫瘤
背景にはシェーグレン症候群あり → 胸腺MALTリンパ腫

胸腺MALTリンパ腫

MALTリンパ腫
悪性リンパ腫の7〜8%
頻度別発生部位:胃 43% 肺 14% 唾液腺 14% 眼付属器12% 皮膚11% 甲状腺 4% 乳腺 4% 胸腺 非常に稀

シェーグレン症候群
4〜7%にMALTリンパ腫を合併

胸腺MALTリンパ腫
中年女性に多い
50%にシェーグレンを合併(70%に自己免疫性疾患を合併)

予後
5年生存率80%程度
緩徐に発育する
転移は稀
高齢者では悪性化する可能性もあり
治療は手術が基本、残存や再発例では放射線療法や化学療法

画像所見
前縦隔に嚢胞成分を含む充実性腫瘤
嚢胞部分はT1WIで低〜軽度高信号、T2WIで水より高信号
造影CTで充実部分に軽度の増強効果

 
参考症例1:50代女性/造影CT(軸位断)
img
造影CT(矢状断)  
img 診断
手術が施行され、胸腺MALTリンパ腫と診断。
自己免疫性疾患の検索はされていない。
     
img   鑑別
嚢胞と充実部を有する前縦隔腫瘤(背景に自己免疫性疾患)

・胸腺MALTリンパ腫
・Multilocular thymic cyst

参考症例2:50代女性/単純+造影CT(軸位断)   造影CT(軸位断)
img   img
診断
手術が施行され、胸腺MALTリンパ腫と診断。
口腔内乾燥症あり、抗SS-A抗体陽性。
   
     
img   鑑別
背景に自己免疫性疾患を持つ前縦隔腫瘤(充実性)

・胸腺腫
・thymic lymphoid follicular hyperplasia
・胸腺MALTリンパ腫(?)

 

まとめ

前縦隔に嚢胞成分を有する充実性腫瘤を認めた場合、胸腺MALTリンパ腫を考慮する必要があり、背景にシェーグレン症候群などの自己免疫性疾患がある場合は更に強く疑うことができる。

 

参考文献
・Izumi H, et al. Multilocular thymic cyst associated with follicular hyperplasia: clinicopathologic study of 4 resected cases. Hum Pathol. 2005;36:841–844.
・Nakagawa M, et al. Nodular thymic lymphoid follicular hyperplasia mimicking thymoma. Clin Imaging. 2008;32:54–57.

 

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Moderator: 井上 達朗